蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

2023-01-01から1年間の記事一覧

ダンマパダで学ぶパーリ語 171. (385. 386.)

385. Yassa pāraṃ apāraṃ vā, pār'āpāraṃ na vijjati, 所の者 彼岸が 此岸が 或は 彼岸・此岸が 否 有る vītaddaraṃ visaṃyuttaṃ, tamahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ. 怖れ無き 離縛せる そを/我は 言ふ 婆羅門と (彼岸(ひがん)、或いは此岸(しがん)、彼岸・此岸の有る…

地道な破壊活動 #1 二重寸法の嵐はなぜ吹き荒れたのか

製図法の基本として、例えばある部品に一つ穴を開けるとして、全体寸法と左端からの距離を記入した場合は右端までの距離は入れないか、括弧でくくって参考寸法としなくてはならないことになっている(二重寸法の禁止)。こうしておかないと、作る側はどちら…

ダンマパダで学ぶパーリ語 170 (383. 384.)

26. Brāhmaṇa-vagga バラモン (婆羅門の章) brāhmaṇa: m. 婆羅門, 婆羅門族 vagga: m. 群, 品, 章 383. Chinda sotaṃ parakkamma, kāme panuda brāhmaṇa, 断て 流れを 励みて 諸欲を 除け 婆羅門よ saṅkhārānaṃ khayaṃ ñatvā, akataññū'si brāhmaṇa. 諸行の …

ダンマパダで学ぶパーリ語 169 (381. 382.)

381. Pāmojja-bahulo bhikkhu, pasanno buddha-sāsane, 喜びに満てる 比丘は 喜べる 仏の教えを adhigacche padaṃ santaṃ, saṅkhār'ūpasamaṃ sukhaṃ. 到達すべし 境地に 寂静の 行の静まれる 安楽なる (喜びに満ち、仏の教えを喜べる比丘は、行の静まり安楽…

ダンマパダで学ぶパーリ語 168 (379. 380.)

379. Attanā coday'attānaṃ, paṭimāse attamattanā, 我により 督励せよ/己を 検察すべし 己を/己により so atta-gutto satimā, sukhaṃ bhikkhu vihāhisi. 其は 己を守れる 具念の 安楽に 比丘よ 住す也 (自ら己れを督励せよ。自ら己れを検察すべし。そは己れ…

ダンマパダで学ぶパーリ語 167 (377. 378.)

377. Vassikā viya pupphāni maddavāni pamuñcati, 茉莉花が 如く 花々を 萎れたる 捨つ evaṃ rāgañca dosañca vippamuñcetha bhikkhavo. 斯くの如く 貪を/と 瞋を/と 捨つべし 比丘らよ (茉莉花(まつりか)が萎れたる花々を捨つるが如く、斯くの如くに貪(と…

「自由」がもたらした混乱と、封建体制下の「自由」

「自由」は福沢諭吉の作った訳語と思っていたが、柳父章著『翻訳語成立事情』によると実はそうではなく古くからあった言葉で、これは禅僧が「とらわれの無い境地」の意味で「自由解脱」と表現するなどいい意味で使われている例はあってもそれは少なく、多く…

ダンマパダで学ぶパーリ語 166. (375. 376.)

375. Tatr'āyamādi bhavati, idha paññassa bhikkhuno, そこで/これは/初 也 此界で 智慧ある 比丘の indriya-gutti santuṭṭhi, pātimokkhe ca saṃvaro, 感官の守護は 満足は 戒に於ける 又 守護は mitte bhajassu kalyāṇe, suddh'ājīve atandite. 友たちに …

ダンマパダで学ぶパーリ語 165 (373. 374)

373. Suññ'āgāraṃ paviṭṭhassa santa-cittassa bhikkhuno, 空家に 入れる 心の寂静せる 比丘には amānusī rati hoti, sammā dhammaṃ vipassato. 非人の 喜楽 あり 正しく 法を 観ぜる (空家に入りて心が寂静し、正しく法を観ぜる比丘には、非人(鬼神などが仮…

ダンマパダで学ぶパーリ語 164 (371. 372.)

371. Jhāya bhikkhu mā pamādo, mā te kāma-guṇe bhamassu cittaṃ, 瞑想せよ 比丘よ 勿れ 放逸なる 勿れ 汝の 欲に 迷ひ行く 心が mā loha-guḷaṃ gilī pamatto, mā kandi dukkhamidanti ḍayhamāno. 勿れ 鉄丸を 吞む 放逸なる 勿れ 泣く 苦なる/是は/と 焼か…

ダンマパダで学ぶパーリ語 163 (369. 370.)

369. Siñca bhikkhu imaṃ nāvaṃ, sittā te lahumessati, 汲み出せ 比丘よ この 舟より 汲み出して 汝の 疾く/行く也 chetvā rāgañca dosañca, tato nibbānamehisi. 断ちて 貪を/と 瞋を/と 後に 涅槃に/行く也 (比丘よ、この舟より水を汲み出せ。汲み出した…

ダンマパダで学ぶパーリ語 162 (367. 368.)

367. Sabbaso nāma-rūpasmiṃ yassa natthi mamāyitaṃ, 全く 名色に於て 所の者 無し 我物と為す asatā ca na socati, sa ve bhikkhū ti vuccati. 無きが故に 又 否 憂う 其は 実に 比丘 と 言はる (名色に於て聊(いささ)かも我が物と為すことの無く、されど…

ダンマパダで学ぶパーリ語 161 (365. 366.)

365. Salābhaṃ n'ātimaññeyya, nāññesaṃ pihayaṃ care, 己が得し物を 否/軽んずべし 否/他の物を 羨み乍ら 行ずべし aññesaṃ pihayaṃ bhikkhu samādhiṃ n'ādhigacchati. 他の物を 羨みある 比丘は 三昧に 否/到達す (己が得しものを軽んずべからず。他のもの…

ダンマパダで学ぶパーリ語 160 (362-364.)

362. Hattha-saṃyato pāda-saṃyato vācā-saññato saṃyat'uttamo, 手を慎みたる 足を慎みたる 言葉を慎みたる 最上に慎みたる ajjhatta-rato samāhito eko santusito tamāhu bhikkhuṃ. 内に楽しめる 入定せる 一人 心行きたる 其を/言ふ 比丘と (手を慎み、足…

ダンマパダで学ぶパーリ語 159 (360. 361.)

25. Bhikkhu-vagga 修行僧 (比丘の章) bhikkhu: m. [bhikkh-u] 比丘, 苾芻, 乞者, 乞食者 √bhikkh(a): [Sk. bhikṣ] 乞求, 乞食 -u: 名詞・形容詞を形成する*1 vagga: m. 群, 品, 章 360. Cakkhunā saṃvaro sādhu, sādhu sotena saṃvaro, 眼によれる 慎みは 善…

ダンマパダで学ぶパーリ語 158 (356-359.)

356. Tiṇa-dosāni khettāni, rāga-dosā ayaṃ pajā, 雑草に害されたる 田畑は 貪に害されたる この 人々は tasmā hi vīta-rāgesu dinnaṃ hoti mahapphalaṃ. それ故 実に 離貪せるに 与へたるは たり 大なる果 (田畑は雑草に害され、この世の人々は貪(とん)に…

ダンマパダで学ぶパーリ語 157 (354. 355.)

354. Sabba-dānaṃ dhamma-dānaṃ jināti, 一切の施与に 法施は 勝る sabba-rasaṃ dhamma-raso jināti, 一切の味に 法味は 勝る sabba-ratiṃ dhamma-rati jināti, 一切の楽に 法楽は 勝る taṇhakkhayo sabba-dukkhaṃ jināti. 渇欲の尽滅は 一切の苦に 打ち勝つ…

ダンマパダで学ぶパーリ語 156 (351-353.)

351. Niṭṭhaṅgato asantāsī vīta-taṇho anaṅgaṇo, 究竟に到れる 無畏の 渇欲を離れたる 無穢の acchindi bhava-sallāni antimo'yaṃ samussayo. 断ちき 生存の矢を 最後の/これは 身体 (究竟に到り、無畏にして、渇欲を離れ、無穢なる者は、生存の矢を断ちき…

ダンマ ~ 仏は法をのみ敬う

パーリ語の「ダンマ」は、通常「法」「真理」などと訳される。最も意味が近いのは「法」と思われるが、法には決めごと(人が決めたこと)の意味合いがあるのに対して、ダンマにはそのような意味はなく、逆に決まりごと、不変のことわり、つまり客観的な真実…

ダンマパダで学ぶパーリ語 155 (348-350.)

348. Muñca pure, muñca pacchato, majjhe muñca, bhavassa pāragū, 脱せよ 先に 脱せよ 後に 半ばに 脱せよ 生存の 彼岸に到れるは sabbattha vimuttamānaso, na puna jāti-jaraṃ upehisi. 一切処に 心の解脱せるは 否 再び 生れと老ひに 到る也 (先に脱せ…

ダンマパダで学ぶパーリ語 154 (345-347.)

345. Na taṃ daḷhaṃ bandhanamāhu dhīrā, 否 其は 堅固なる 結縛/言へり 賢者達は yadāyasaṃ dārujaṃ pabbajañca, 所の物/鉄の 木の 麻紐の/又 sāratta-rattā maṇikuṇḍalesu, puttesu dāresu ca yā apekkhā, 執著や染著 宝石の耳環への 子等への 妻等への 又…

田分けの制度 ~ 分割相続

江戸時代,農民が田畑を分割相続したこと。幕府諸藩が分地制限令を出したのは,こうした分割によって耕地が零細化し,担税能力が減少することを防ごうとしたものである。零細化して水呑百姓となるおそれがあるところから田分けするものを「戯け (呆け) 」と…

ダンマパダで学ぶパーリ語 153 (342-344.)

342. Tasiṇāya purakkhatā pajā parisappanti saso va bandhito, 渇欲により 為されたる 人々は 踠き回る 兎が 如く 縛されたる saṃyojana-saṅga-sattakā dukkhamupenti punappunaṃ cirāya. 絆に縛され執着せる者等は 苦に/赴く 再三再四 長き間 (渇欲に駆ら…

日本の「労働」観 ~ 働くことはよろこび

「働」の文字は国字(日本で作られた文字)で、中国では「働く」は「動く」、もしくは「工作する」と言い、日本では、もとからある「はたらく」の言葉を漢字で表すとき、「動」の代わりに、人が動くとして「働」とした。 「動」の文字は、その偏部のもとの文字…

ダンマパダで学ぶパーリ語 152 (339-341.)

339. Yassa chattiṃsati sotā manāpa-savanā bhusā, 所の者 三十六の 水流は 快き流れは 強き vāhā vahanti duddiṭṭhiṃ saṅkappā rāga-nissitā. 運ぶ物は 運ぶ 悪見者なるを 思念が 貪に依れる (その者の三十六の快き流れたる強き水流、その流れは思念が貪に…

日本の「仕事」観 ~ 日本人は「公」に仕える人々であった

「仕」も「事」も「つかえる」と読み、「仕」は「士」の文字が見られるように戦士階級が出仕すること、「事」はもとは神につかえることを意味し、後には王につかえることにも使われるようになり、前者を「大事」、後者を「小事」と呼んだ。日本人はもとから…

ダンマパダで学ぶパーリ語 151 (337. 338.)

337. Taṃ vo vadāmi bhaddaṃ vo yāvant'ettha samāgatā, それを 汝らに 告ぐ 幸が 汝らの 所の/ここに 来集せる taṇhāya mūlaṃ khaṇatha, usīr'attho va bīraṇaṃ, 渇欲の 根を 掘り出せ 香根を求むる者が 如く 香菜を mā vo naḷaṃ va soto va māro bhañji pu…

ダンマパダで学ぶパーリ語 150 (334-336.)

24. Taṇhā-vagga 愛執 (渇欲の章) taṇhā: f. [Sk. tṛṣṇā] 渇愛, 愛, 愛欲 tṛṣṇā: 渇き; 欲望, 貪欲 vagga: m. 群, 品, 章 334. Manujassa pamatta-cārino taṇhā vaḍḍhati māluvā viya, 者の 放縦に為せる 渇欲は 増す 蔓草が 如く so plavati hurāhuraṃ, pha…

ダンマパダで学ぶパーリ語 149 (332. 333.)

332. Sukhā matteyyatā loke, atho petteyyatā sukhā, 楽しき 母なるは 世で また 父なるは 楽しき sukhā sāmaññatā loke, atho brahmaññatā sukhā. 楽しき 沙門なるは 世で また 婆羅門なるは 楽しき (世で母なるものは楽しき、父なるものもまた楽しきなり…

ダンマパダで学ぶパーリ語 148 (330. 331.)

330. Ekassa caritaṃ seyyo, natthi bāle sahāyatā, 独りの 歩みが よりよき 無し 愚者に 友誼は eko care na ca pāpāni kayirā, 独り 歩むべし 否 又 悪を 為すべし appossukko mātaṅg'araññe va nāgo. 求むる事少なき 象林の の如く 象 (独りの歩みがより…