371.
Jhāya bhikkhu mā pamādo, mā te kāma-guṇe bhamassu cittaṃ,
瞑想せよ 比丘よ 勿れ 放逸なる 勿れ 汝の 欲に 迷ひ行く 心が
mā loha-guḷaṃ gilī pamatto, mā kandi dukkhamidanti ḍayhamāno.
勿れ 鉄丸を 吞む 放逸故に 勿れ 泣く 苦なる/是は/と 焼かれ乍ら
(比丘よ、瞑想せよ。放逸なることなかれ。汝の欲に心が迷ひ行くことなかれ。放逸の故に鉄丸を呑むことなかれ。焼かれながらこれは苦なりと泣き叫ぶことなかれ。)
修行僧よ。瞑想せよ。なおざりになるな。汝の心を欲情の対象に向けるな。なおざりのゆえに鉄丸を呑むな。(灼熱した鉄丸で)焼かれるときに、「これは苦しい!」といって泣き叫ぶな。
jhāya: jhāyati の imp. 2sg.*1
jhāyati: [√jhā, Sk. dhyai]*2 静慮す, 禅定をなす, 思念す
bhikkhu: m. [bhikkh-u] 比丘, 苾芻, 乞者, 乞食者 voc. sg.
√bhikkh(a): [Sk. bhikṣ] 乞求, 乞食
-u: 名詞・形容詞を形成する*3
mā: adv. なかれ [禁止, 強い決意, 否定的願望, 未来への危惧, 疑問, 否定等を示す]
pamādo: pamāda の nom. sg. m.
pamāda: m. a. [pa-mad*4-a] 放逸, 放逸なる
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*5
√mad(a): 迷妄, 等閑, 忘却
te: tvaṃ の gen. sg.*6
tvaṃ: 汝, 君
kāma-guṇe: kāma-guṇa の loc. sg.
kāma-guṇa: 妙欲
kāma: m. n. [kam*7-a] 欲, 愛欲, 欲念, 欲情, 欲楽
√kam(u): 欲す, 楽しむ
-a: 名詞・形容詞を形成する*8
guṇa: 重, 種, 種類
bhamassu: bhamati の imp. mid. 2sg.*9
bhamati: [√bham, Sk. bhram] 迷走す, うろつく, 彷徨する
cittaṃ: citta の nom. sg.
citta: n. [<cit] 心
√cit(a): 思考, 認識, 知性, 理解, 心, 魂
loha-guḷaṃ: loha-guḷa の acc. sg.
loha-guḷa: 銅丸, 鉄丸
loha: n. 金属, 銅
guḷa: 玉, 球
gilī: =gili gilati の aor. 2sg.*10
gilati: [√gil(a)] 嚥下す, のむ, 貪食す
pamatto: pamatta の abl. sg. m.*11
pamatta: a. [pamajjati の pp.]*12 放逸なる, 放縦の, 我儘の
pamajjati: [pa-majjati] 酔う; 放逸となる, 我儘となる
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*13
majjati: [√mad(a)]*14 酔う; 夢中になる
√mad(a): 迷妄, 等閑, 忘却
kandi: kandati の aor. 2sg.*15
kandati: [√kad(a), Sk. krand]*16 泣く, 悲泣す, 号泣す
dukkhamidanti: dukkhaṃ*17 + idaṃ*18 + ti
dukkhaṃ: dukkha の nom. sg.
dukkha: a. n. [dukkh-a] 苦, 苦痛, 苦悩
√dukkh(a): [Sk. duḥkha] 苦, 苦痛, 不快, 困難, 不安
idaṃ: ayaṃ の nom. sg. n.*19
ayaṃ: pron. これ, この
ti: ind. [iti の略] と, かく
ḍayhamāno: ḍayhamāna の nom. sg. m.
ḍayhamāna: ḍayhati の ppr.*20
ḍayhati: [ḍahati の pass.]*21 焼かれる, 荼毘に付す
ḍahati: [√dah(a)] 焼く, 苦しめる
372.
N'atthi jhānaṃ apaññassa, paññā n'atthi ajhāyato,
否/あり 禅定は 智慧無きに 智慧は 否/あり 禅定無きに
yamhi jhānañca paññā ca, sa ve nibbāna-santike.
所有の者 禅定/又 智慧 又 そは 実に 涅槃の近くに
(智慧無き者に禅定は無く、禅定無き者に智慧は無し。禅定と智慧とを有する者、そは実に涅槃の近くにあり。)
明らかな知慧の無い人には精神の安定統一がない。精神の安定統一していない人には明らかな知慧が無い。精神の安定統一と明らかな知慧とがそなわっている人こそ、すでにニルヴァーナの近くにいる。
n'atthi: na*22 + atthi
na: adv. なし
atthi: [√as(a)]*23 ある, 存在する
jhānaṃ: jhāna の nom. sg.
jhāna: n. [jhā-na] 禅, 静慮
√jhā: =jhe 考える, 熟慮する, 瞑想する
-na: 名詞を形成する*24
apaññassa: apaññā の gen. sg. m.
apaññā: a- + paññā
a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不
paññā: f. [pa-ñā*25-ā] 般若, 慧, 智慧
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*26
√ñā: =jñā, jā 知る
-ā: 女性名詞を形成する*27
ajhāyato: a- + jhāyato
jhāyato: jhāyati の ppr. gen. sg. m.*28
yamhi: ya の loc. sg. m.*29
jhānañca: jhānaṃ*30 + ca
ca: conj. と, そして, また
sa: =so ta の nom. sg. m.*31
ta: pron. それ
ve: adv. 実に
nibbāna-santike: nibbāna-santika の loc. sg.
nibbāna: n. [ni-vā*32-na] 涅槃, 寂滅
ni-: 外に, 前へ, 下に, 中に, 下方に, 中で, 下で *33
√vā: 行く, 吹く, 滅する, 香る
santika: n. [sa*34-antika] 付近, 面前
sa: =saha prep. 共に, 有する, 同じ
antika: a. 近い