蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

スッタニパータで学ぶパーリ語 133 (282. 283.)

282.

Tato palāpe vāhetha assamaṇe samaṇa-mānine,

其後 籾殻共を 逐へ 非沙門共を 沙門と慢心せる

niddhamitvāna pāp'icche pāp'ācāra-gocare.

吹き払ひて    悪を欲せる 悪しきに通へる

(その後に、自らを沙門と慢心せる沙門にあらざる籾殻どもを逐(お)へ。悪を欲し悪しき処に通へる者どもを吹き払いて。)

ついで、実は〈道の人〉ではないのに〈道の人〉であると思いなしている籾殻どもを除き去れ。──悪を欲し、悪い行いをなし、悪いところにいるかれらを吹き払って。

 tato: adv. [ta の abl.] それより, それ故に, その後

  ta: pron. それ

 palāpe: palāpa の acc. pl.

  palāpa: m. もみがら

 vāhetha: vāheti の imper. 2pl.*1

  vāheti: [vahati の caus.]*2 運ばせる, 運ぶ

   vahati: [√vah(a)] 運ぶ, 運搬す, 運載す; 実行す

    √vah(a): 運ぶ, 持って来る, 運び去る, 持ち去る

 assamaṇe: assamaṇa の acc. pl.

  assamaṇa: m. [a-samaṇa*3] 非沙門

   a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不

   samaṇa: m. [sam-ana] 沙門

    √sam(u): [Sk. śram] 勤息

    -ana: 名詞・形容詞を形成する*4

 samaṇa-mānine: samaṇa-mānin の acc. pl.

  mānin: a. [man*5-in] 慢心ある, 誇りをもつ

   √man(u): 知る, 思う, 考える, 見なす, 誇る

   -in: 所有形容詞を形成する*6

 niddhamitvāna: niddhamati の ger.*7

  niddhamati: [ni-dhamati*8] 消除す, 除去す, 捨てる

   ni-: 外に, 前へ, 下に, 中に, 下方に, 中で, 下で*9

   dhamati: [√dham(a), Sk. dhmā] 吹く, 鳴らす, 火を吹く

 pāp'icche: pāp'iccha の acc. pl. m.

  pāp'iccha: pāpa*10-iccha  悪欲の

   pāpa: a. n. 悪き, 悪, 悪人

   iccha: a. [<is] 欲せる

 pāp'ācāra-gocare: pāp'ācāra-gocara の acc. sg. m.

  pāp'ācāra: [pāpa*11-ācāra]  悪行

   ācāra: m. [ā-car*12-a] 行, 正行, 浄行

    ā-: pref. へ, で, に向かって, の近くに, までに, の限り, から離れて, じゅうに*13

    √car(a): 行く, 動く, 彷徨う, 行ず

  gocara: m. [go-car-a] 行境, 行処, 範囲, 親近処

   go: m. 牛, 牡牛

 

283.

Suddhā suddhehi saṃvāsaṃ kappayavho patissatā,

清き者等は 清き者等と 共住を   為せ   心しらひて

tato samaggā nipakā dukkhass'antaṃ karissathā ti.

其後 和合せる 賢者等は  苦の/終極を  成す也  と

(清き者らは清き者らと心しらいひて共に住み為せ。その後には和合せる賢者らは苦の終極を成すなり、と。)

みずからは清き者となり、互いに思いやりをもって、清らかな人々と共に住むようにせよ。そこで、聡明な者どもが、友に仲よくして、苦悩を終滅せしめるであろう。

 suddhā: suddha の nom. pl. m.

  suddha: a. [sujjhati の pp.]*14 浄き, 清浄の, 純粋

   sujjhati: [√sudh(a), Sk. śudh]*15 浄まる, 清まる

 suddhehi: suddha の instr. pl. m.

 saṃvāsaṃ: saṃvāsa の acc. sg.

  saṃvāsa: m. [saṃ-vas*16-a] 共住, 同住, 性交, 親交

   √vas(a): 住す, 存す

   -a: 名詞・形容詞を形成する*17

 kappayavho: kappeti の imper. mid. 2pl.*18

  kappeti: [√kap(u)]*19 なす, 営む, 整える, 準備する

 patissatā: patissata の nom. pl. m.*20

  patissata: =paṭissata  a. [paṭisarati の pp.]*21 憶念せる, 記憶せる

   paṭisarati: [paṭi-sarati] 追憶す, 憶念す

    paṭi-: pref. prep. 反対に, 戻して, 逆方向に, 戻って, 返して, 向かって, 近くに*22

    sarati: =sumarati  [√sar(a), Sk. smṛ] 記憶す, 憶念す

     √sar(a): [Sk. smṛ] 念ずる, 熟慮する, 喜ばせる, まもる, 生きる

 samaggā: samagga の nom. pl. m.

  samagga: a. [Sk. samagra] 和合せる, 統一の

   samagra: a. 全て, 全体, 皆, あらゆる

 nipakā: nipaka の nom. pl. m.

  nipaka: a. m. 賢明の, 慎重なる, 智者

 dukkhass'antaṃ: dukkhassa*23 + antaṃ

  dukkhassa: dukkha の gen. sg.

   dukkha: a. n. [dukkh-a] 苦, 苦痛, 苦悩

    √dukkh(a): [Sk. duḥkh] 苦, 苦痛, 不快, 困難, 不安

  antaṃ: anta の acc. sg.

   anta: m. 終極, 目的, 極限, 辺, 極端

 karissathā: =karissatha*24

  karissatha: karissati の 2pl.*25

   karissati: karoti の fut.*26

    karoti: [√kar(a), Sk. kṛ]*27 なす, 行う, 作る