15.
Idha socati, pecca socati, pāpa-kārī ubhayattha socati.
此界に 愁ふ 逝きて 愁ふ 作悪者は 両処に 愁ふ
so socati, so vihaññati, disvā kamma-kiliṭṭham attano.
そは 愁ふ そは 悩まさる 見て 業の汚れたるを 己れの
(此界に愁ひ、逝きて愁ひ、悪を為す者は両処に愁ふ。そは愁ひ、そは悩まさる。己れの業の汚れたるを見て。)
悪いことをした人は、この世で憂え、来世でも憂え、ふたつの所で共に憂える。かれは、自分の行為が汚れているのを見て、憂え、悩む。
idha: adv. ここに, 此界に
socati: [√suc(a), Sk. śuc]*1 愁う, うれう, 悲しむ
pecca: [pa-i の ger.]*2 過ぎ去りて, 死後に
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*3
√i: 行く
pāpa-kārī: pāpa-kārin の nom. sg.
pāpa-kārin: 作悪者
pāpa: a. n. 悪き, 悪, 悪人
kārin: a. [kāra-in] 作す, 行う, 作者
kāra: m. 行為, 所作; 字, 文字; 作者
-in: 所有形容詞を形成する*4
ubhayattha: adv. [ubhaya-tha*5] 両処に
ubhaya: pron. 両, ニつ
-tha: 場所を表す副詞を形成する*6
so: ta の nom. sg. m.*7 それは, 彼は
ta: pron. それ
vihaññati: [vihanati の pass.]*8 打たれる, 殺される, 脳害される
vihanati: [vi-han] 打つ, 殺害す
vi-: 語根の意味を強調する*9
√han(a): 殺す, 害す, 打つ, 壊す, 除去する, 制す
disvā: =disvāna [dissati の ger.]*10 見て
dissati: [√dis の pass.]*11 見られる, 見える
√dis(a): [Sk. dṛś] 見る
kamma-kiliṭṭham: kamma-kiliṭṭha の acc. sg.
kamma: n. [kar*12-ma] 業, 行為, 作業, 家業, 羯磨, 儀式
√kar(a): [Sk. kṛ] なす, 作す, 作る
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*13
kiliṭṭha: a. [kilissati の pp.]*14 染汚されたる, 染着せる, 雑染の
kilissati: [√kilis(a), kliś] 染まる, 汚れる, ぬれる
√kilis(a): [Sk. kliś] 苦痛, 苦しみ, 悩み, 妨げ
attano: attan の gen. sg.*15
attan: m. [Sk. ātman] 我, 自己, 我体
16.
Idha modati, pecca modati, kata-puñño ubhayattha modati,
此界に 喜ぶ 逝きて 喜ぶ 善を為したるは 両処に 喜ぶ
so modati, so pamodati, disvā kamma-visuddhim attano.
そは 喜ぶ そは 満足す 見て 業の浄まれるを 己れの
(此界に喜び、逝きて喜び、善を為したる者は両処に喜ぶ。そは喜び、そは満足す。己れの業の浄まれるを見て。)
善いことをした人は、この世で喜び、来世でも喜び、ふたつのところで共に喜ぶ。彼は、自分の行為が浄らかなのを見て、喜び、楽しむ。
modati: [√mud(a)]*16 喜ぶ, 喜悦す
kata-puñño: kata-puñña の nom. sg. m.
kata: [karoti の pp.]*17 なされたる, 為作せる, 行作の
karoti: [√kar(a), Sk. kṛ] なす, 行う, 作る
puñña: n. 福, 善, 福德, 功徳
pamodati: [pa-modati] 喜ぶ, 満足する
pa-: pref. 前に, 先に, 強意
kamma-visuddhim: kamma-visuddhi の acc. sg.
visuddhi: f. [<visuddha] 清浄, 浄
visuddha: a. [visujjhati の pp.]*18 清き, 清浄の, 純粋の
visujjhati: [vi-sujjhati] 清まる, 清くなる
sujjhati: [√sudh(a), Sk. śudh]*19 浄まる, 清まる