312.
Yaṃ kiñci sithilaṃ kammaṃ, saṃkiliṭṭhañ'ca yaṃ vataṃ,
所の者 如何なる 緩める 行ひが 染汚されたる/又 所の者 戒が
saṅkassaraṃ brahma-cariyaṃ, na taṃ hoti maha'pphalaṃ.
怪しき 梵行が 否 そは たり 大なる/果
(如何なる行ひも緩みたる者、また戒の汚染されたる者、梵行の怪しき者、そは大なる果たること無し。)
その行ないがだらしがなく、身のいましめが乱れ、清らかな行ないなるものも怪しげであるならば、大きな果報はやって来ない。
yaṃ: ya の nom. sg. n.*1
ya: pron. rel. 所のもの
kiñci: pron. [kiṃ*2-ci] 何ものか, 何でも
kiṃ: ka の nom. sg. n.*3 何, いかに, いかなる
-ci: 疑問代名詞に付いて不定代名詞を形成する*4
sithilaṃ: sithila の nom. sg. n.
sithila: =saṭhila a. 徐緩の, ゆるやかな
kammaṃ: kamma の nom. sg.
kamma: n. [kar*5-ma] 業, 行為, 作業, 家業, 羯磨, 儀式
√kar(a): [Sk. kṛ] なす, 作す, 作る
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*6
saṃkiliṭṭhañ'ca: saṃkiliṭṭhaṃ*7 + ca
saṃkiliṭṭhaṃ: saṃkiliṭṭha の nom. sg. n.
saṃkiliṭṭha: saṃ- + kiliṭṭha
saṃ-: pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に*8
kiliṭṭha: a. [kilissati の pp.]*9 染汚されたる, 染着せる, 雑染の
kilissati: [√kilis(a), Sk. kliś]*10 染まる, 汚れる, ぬれる
ca: conj. と, そして, また
vataṃ: vata の nom. sg. n.
vata: =bata m. n. 禁戒, 誓戒; [vatta と混用] 儀法, 善行, 浄行
saṅkassaraṃ: saṅkassara の nom. sg. n.
saṅkassara: a. 疑念を起させる, 邪悪の
brahma-cariyaṃ: brahma-cariya の nom. sg.
brahma-cariya: n. 梵行, 仏道修行; 清浄行, 不婬, 独身生活
brahma: =brahmā m. a. 梵, 梵天, 梵王; 梵=如来; 梵者, 婆羅門; 尊貴の, 神聖の
cariya: n. [cara*11-iya] 行, 行為, 所行
cara: a. m. [car-a] 歩行の, 密偵, 間諜
√car(a): 行く, 行ず
-a: 名詞・形容詞を形成する*12
-iya: 抽象名詞を形成する*13
na: adv. なし
taṃ: ta の nom. sg. n.*14
ta: pron. それ
hoti: =bhavati [√hū]*15 ある, 存在する
maha'pphalaṃ: maha'pphala の nom. sg. n.
maha'pphala: mahaṃ*16 + phalaṃ*17
mahaṃ: mahat の nom. sg. n.*18
mahat: =mahant a. 大なる, 偉大の
phalaṃ: phala の nom. sg.
phala: n. [phal-a] 果, 果実, 結果
√phal(a): 果を成す
313.
Kayirā ce kayirāth'enaṃ, daḷhamenaṃ parakkame,
為すべし もし すべかれば/それを 堅く/それに 励むべし
sithilo hi paribbājo bhiyyo ākirate rajaṃ.
緩める 実に 遊行者は 更に多く まき散らす 塵を
(もし汝らが為すべかればそれを為すべし。堅くそれに励むべし。実に緩みたる遊行者は更に多く塵をまき散らす。)
もしも為すべきことであるならば、それを為すべきである。それを断乎として実行せよ。行ないの乱れた修行者は、いっそう多く塵をまき散らす。
kayirā: karoti の opt.*19
karoti: [√kar(a), Sk. kṛ] なす, 行う, 作る
ce: conj. もし, 若し
kayirāth'enaṃ: kayirātha*20 + enaṃ
kayirātha: koroti の opt. 2pl.*21
enaṃ: ena の acc. sg. m.*22
ena: =eta pron. これ, それ
daḷhamenaṃ: daḷhaṃ*23 + enaṃ
daḷhaṃ: adv. [daḷha の acc.]*24 堅く
daḷha: a. 堅固の, 確固たる
parakkame: parakkamati の opt.*25
parakkamati: [parā-kamati*26] 努力す, はげむ, 力を振るう, 勇気を見せる
parā-: 離れて, 戻って, 逆に, 外れて, 上に*27
kamati: [√kam(u), Sk. kram] 歩く, 行く, 来る, 入る, 影響す
hi: adv. conj. 実に; 何となれば
paribbājo: paribbāja の nom. sg.
paribbāja: =paribbājaka m. [pari-vaj*28-a] 遍歴者, 普行者, 遊行者, 梵志 f. paribbājikā
pari-: pref. 円, 遍ねく, 完全に, 強意. 完全性などを意味する*29
√vaj(a): [Sk. vraj] 行く
-a: 名詞・形容詞を形成する*30
bhiyyo: bhiyya の nom. sg. m.*31
bhiyya: a. adv. [bahu の比較級形]*32 より多き, さらに多く
bahu: a. 多くの, 多の. adv. 多く
ākirate: ākirati の mid. sg.*33
ākirati: [ā-kirati] 散布す, 散らす
ā-: pref. へ, で, に向かって, の近くに, までに, の限り, から離れて, じゅうに*34
kirati: [√kir] まき散らす
rajaṃ: raja の acc. sg.
raja: n. [raj-a] 塵, 塵垢, 不浄
√raj: 貪, 染