304.
Dūre santo pakāsenti, himavanto va pabbato,
遠くで 善なるは 輝かしむ 雪ある の如く 山
asant'ettha na dissanti, rattiṃ khittā yathā sarā.
不善なる/ここで 否 見らる 夜に 放たれたる の如く 矢
(善なる者は遠くに於て輝く(己れを輝かしむ)。雪ある山の如く。不善なる者はここに於て見らること無し。夜に放たれたる矢の如く。)
善き人々は遠くにいても輝く、──雪を頂く高山のように。善からぬ人々は近くにいても見えない、──夜陰に放たれた矢のように。
dūre: dūra の loc. sg. m.
dūra: a. 遠き, 遠隔の
santo: sant の nom. sg. m.*1
sant: a. [atthi の ppr.]*2 ありつつ, 存在の; 善なる
pakāsenti: pakāseti の pl.
pakāseti: [pakāsati の caus.]*3 説明す, 明らかにす, 知らせる
pakāsati: [pa-kās] 輝やく, 明らかとなる, 知られる
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*4
√kās(u): [Sk. kāś] 輝く, 現われる
himavanto: himavant の nom. sg.*5
himavant: m. [hima-vant] 雪山, ヒマラヤ山
hima: n. 雪, 氷
-vant: 名詞・所有形容詞を形成する*6
va: =iva indecl. 如く
pabbato: pabbata の nom. sg.
pabbata: m. 山, 山岳, 山の住人
asant'ettha: asanto*7 + ettha
asanto: asant の nom. sg. m.
asant: =asat a. [a-sant] 存在しない, 所有しない, 不実の, 不善の, 不真の
a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不
ettha: adv. ここに
na: adv. なし
dissanti: dissati の pl.
dissati: [√dis]*8 見える, 見られる
rattiṃ: adv. [ratti の acc.]*9 夜に
ratti: f. 夜
khittā: khitta の nom. pl. m.
khitta: a. [khipati の pp.]*10 投げられたる, 捨てられたる, 混乱せる
khipati: [√khip(a), Sk. kṣip] 投ぐ, 捨つ, 混乱さす
yathā: adv. [ya-thā] ~の如くに, ~の如し
ya: pron. rel. 所のもの
-thā: 副詞を形成する*11
sarā: sara の nom. pl.
sara: m. 葦(あし), 矢
305.
Ek'āsanaṃ eka-seyyaṃ eko caramatandito,
独り坐し 独り臥し 独り 行じある/懈怠無き
eko damayamattānaṃ van'ante ramito siyā.
独り 御しある/己れを 林の辺で 楽しめる たるべし
(独り坐し、独り臥し、独り行じある懈怠無き者、独り己れを御しあり、林の辺(ほとり)で楽しめる者たるべし。)
ひとり坐し、ひとり臥し、ひとり歩み、なおざりになることなく、わが身をととのえて、林のなかでひとり楽しめ。
ek'āsanaṃ: ek'āsana の acc. sg.*12
ek'āsana: eka*13 + āsana
eka: a. num. 一, 一つ, 或る
āsana: n. [ās-ana] 坐具, 坐所, 座
√ās(a): 坐す, 座
-ana: 名詞・形容詞を形成する*14
seyyaṃ: seyyā の acc. sg.*15
seyyā: f. 臥床, 寝床, 臥具, 臥法, 横臥
eko: eka の nom. sg. m.
caramatandito: caramatandita の nom. sg. m.
caramatandita: caraṃ*16 + atandita
caraṃ: carati の ppr. nom. sg. m.*17
carati: [√car(a)] 行く, 行ず, 歩く
atandita: a. [a-tandita] 倦怠なき, 活動的な, 努力する
a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不
tandita: a. [√tand の pp.]*18 倦怠の, 懶惰の
√tand: 寛ぐ
damayamattānaṃ: damayaṃ*19+ attānaṃ
damayaṃ: damayati の ppr. nom. sg. m.*20
damayati: =dameti [dammati の caus.]*21 調御す, ならす, 練訓す
dammati: [√dam(u)] ならされる, おとなしくなる
attānaṃ: attan の acc. sg.*22
attan: m. [Sk. ātman] 我, 自己, 我体
van'ante: van'anta の loc. sg.
van'anta: vana*23 + anta
vana: n. 林; 欲林, 欲望
anta: m. 終極, 目的, 極限, 辺, 極端
ramito: ramita の nom. sg. m.
ramita: a. [ramati の pp.]*24 楽しめる, 喜ベる
ramati: [√ram(u)] 楽しむ, 喜ぶ
siyā: atthi の opt.*25 あるであろう, あれかし
atthi: [√as(a)]*26 ある, 存在する