231.
Kāyappakopaṃ rakkheyya, kāyena saṃvuto siyā,
身体の憤怒を 御すべし 身的に 御されたる たるべし
kāya-duccaritaṃ hitvā, kāyena sucaritaṃ care.
身体の悪行を 捨てて 身体により 善行を 行ずべし
(身体の憤怒を御すべし。身体を御せる者たるべし。身体の悪行を捨てて、身体によりて善行を行ずべし。)
身体がむらむらするのを、まもり落ち着けよ。身体について慎んでおれ。身体による悪い行ないを捨てて、身体によって善行を行え。
kāyappakopaṃ: kāyappakopa の acc. sg.
kāyappakopa: kāya + pakopa*1
kāya: m. 身, 身体, 集まり
pakopa: m. [pa-kopa] 憤怒, 激怒
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*2
kopa: m. [kup*3-a] 忿恨, 憤怒, 怒気
√kup(a): 忿怒
-a: 名詞・形容詞を形成する*4
rakkheyya: rakkhati の opt.*5
rakkhati: [√rakkh] 護る, 守る, 守護す
√rakkh(a): [Sk. rakṣ] 守護, 制御, 統治, 回避, 注意
kāyena: kāya の ins. sg.*6
saṃvuto: saṃvuta の nom. sg. m.
saṃvuta: a. [saṃ-vu の pp.]*7 防護せる, 制御せる; 閉じたる, 結べる
saṃ-: pref. 共に, 正しく, 集まる, 同じ, 強意*8
√vu: [Sk. vṛ] 抑制する, まもる
siyā: atthi の opt.*9 あるであろう, あれかし
atthi: [√as(a)]*10 ある, 存在する
kāya-duccaritaṃ: kāya-duccarita の acc. sg.
kāya-duccarita: 身悪行
duccarita: a. [du-carita*11] 悪行
du-: pref. 悪き, 難き
carita: a. n. m. [carati の pp.]*12 所行, 行ぜる, 行, 行為, 行者, 性行者, 性格者
carati: [√car(a)] 行く, 行ず, 歩く
hitvā: =hitvāna [jahāti の ger.]*13 捨断して, 捨てて, 棄てて
jahāti: =jahati [√hā] 捨つ, 断ず*14
sucaritaṃ: sucarita の acc. sg. m.
sucarita: a. n. [su-carita] 善行, 妙行
su-: pref. よき, 善き, 良き, 妙(たえ)なる, 易き, 極めて
care: carati の opt.*15
232.
Vacīpakopaṃ rakkheyya, vācāya saṃvuto siyā,
言葉の憤怒を 御すべし 言葉的に 御されたる たるべし
vacīduccaritaṃ hitvā, vācāya sucaritaṃ care.
言葉の悪行を 捨てて 言葉により 善行を 行ずべし
(言葉の憤怒を御すべし。言葉を御せる者たるべし。言葉の悪行を捨てて、言葉によりて善行を行ずべし。)
ことばがむらむらするのを、まもり落ち着けよ。ことばについて慎んでおれ。語(ことば)による悪い行ないを捨てて、語によって善行を行なえ。
vacīpakopaṃ: vacīpakopa の acc. sg.
vacīpakopa: vacī- + pakopa
vacī-: [vacas の 複合形] 語, 言, 口
vacas: n. [vac-as] 語, 言
√vac(a): 語, 言
-as: 名詞を形成する*16
vācāya: vācā の ins. sg.*17
vācā: f. [vac*18-ā] 語, 言
-ā: 女性名詞を形成する*19
vacīduccaritaṃ: vacīduccarita の acc. sg.
vacīduccarita: vacī- + duccarita
233.
Mano-pakopaṃ rakkheyya, manasā saṃvuto siyā,
心の憤怒を 御すべし 心的に 御されたる たるべし
mano-duccaritaṃ hitvā, manasā sucaritaṃ care.
心の悪行を 捨てて 心により 善行を 行ずべし
(心の憤怒を御すべし。心を御せる者たるべし。心の悪行を捨てて、心によりて善行を行ずべし。)
心がむらむらするのを、まもり落ち着けよ。心について慎んでおれ。心による悪い行ないを捨てて、心によって善行を行なえ。
mano-pakopaṃ: mano-pakopa の acc. sg.
mano: manas の nom. sg.*20
manas: n. [man-as] 意, 心
√man(u): 思う, 考える, 見なす, 誇る, 知る
manasā: manas の ins. sg.*21
mano-duccaritaṃ: mano-duccarita の acc. sg.
234.
Kāyena saṃvutā dhīrā, atho vācāya saṃvutā,
身的に 御されたる 賢者等 又 言葉的に 御されたる
manasā saṃvutā dhīrā, te ve suparisaṃvutā.
心的に 御されたる 賢者等 其等は 実に よく完全に御されたる
(身体を御せる賢者ら、また言葉を御し、心を御せる賢者ら、それらは実によく完全に御したるなり。)
落ちついて思慮ある人は身をつつしみ、ことばをつつしみ、心をつつしむ。このようにかれらは実によく己れをまもっている。
saṃvutā: saṃvuta の nom. pl. m.
dhīrā: dhīra の nom. pl. m.
dhīra: a. m. [dhī-ra] 堅固な, 賢き, 賢者, 慧者, 英賢
√dhī: 智, 知, 理解, 想像, 概念
-ra: 名詞・形容詞を形成する*22
atho: =atha ind. 時に, また
te: ta の nom. pl. m.*23
ta: pron. それ
ve: adv. 実に
suparisaṃvutā: suparisaṃvuta の nom. pl. m.
suparisaṃvuta: su- + pari- + saṃvuta
pari-: pref. 円, 遍ねく, 完全に, 強意. 完全性などを意味する*24