193.
Dullabho puris'ājañño, na so sabbattha jāyati,
得難し 尊き人は 否 其は 一切処に 生まる
yattha so jāyati dhīro, taṃ kulaṃ sukhamedhati.
の所で 其は 生まる 賢者が 其は 家は 安楽に/栄ゆ
(尊き人は得難し。そは何処(いづこ)にも生まるには非ず。その賢者の生まる所の、その家は安楽に栄ゆ。)
尊い人(=ブッダ)は得難い。彼はどこにでも生れるのではない。思慮深い人(=ブッダ)の生まれる家は、幸福に栄える。
dullabho: dullabha の nom. sg. m.
dullabha: a. [du-labha*1] 得難き
du-: pref. 悪き, 難き
labha: a. [labh-a] 得る
-a: 名詞・形容詞を形成する*2
puris'ājañño: puris'ājañña の nom. sg.
puris'ājañña: purisa*3 + ājañña
purisa: m. 人, 男, 男子, 丈夫, 人間, 神我
ājañña: =ājānīya, ājāniya a. m. よき生れの, 善種の, 高貴の, 駿馬, 良馬
na: adv. なし
so: ta の nom. sg. m.*4
ta: pron. それ
sabbattha: adv. [sabba-tha*5] 一切処に
sabba: a. n. 一切の, すべて, 一切のもの
-tha: 場所を表す副詞を形成する*6
jāyati: [janati の pass.]*7 生まれる, 再生する
janati: [√jan(a)] 生ずる, 産む
yattha: adv. [ya-tha*8] そこへ, そこで
ya: pron. rel. 所のもの
dhīro: dhīra の nom. sg. m.
dhīra: a. m. [dhī-ra] 堅固な, 賢き, 賢者, 慧者, 英賢
√dhī: 智, 知, 理解, 想像, 概念
-ra: 名詞・形容詞を形成する*9
taṃ: ta の nom. sg. n.*10
kulaṃ: kula の nom. sg.
kula: n. [kul-a] 家, 良家, 族姓
√kul(a); 蓄積する, 親族となる
sukhamedhati: sukhaṃ*11 + edhati
sukhaṃ: adv. [sukha の acc. sg.]*12 安楽に
sukha: a. n. [sukh-a] 楽, 安楽, 幸福
√sukh(a): 幸福にする, 喜ばせる
edhati: [√edh(a)] 完成す, 栄える, 増大す, 得る
194.
Sukho buddhānamuppādo, sukhā saddhamma-desanā,
楽しき 覚者の/生起は 楽しき 正法を示すは
sukhā saṅghassa sāmaggī, samaggānaṃ tapo sukho.
楽しき 僧伽の 和合は 和合せる者等の 鍛錬は 楽しき
(覚者の生れ出づるは楽しき。正法を示すは楽しき。僧伽の和合は楽しき。和合せる者らの鍛錬は楽しき。)
もろもろのみ仏の現われたまうのは楽しい。正しい教えを説くのは楽しい。つどいが和合しているのは楽しい。和合している人々がいそしむのは楽しい。
sukho: sukha の nom. sg. m.
buddhānamuppādo: buddhānaṃ*13 + uppādo
buddhānaṃ: buddha の gen. pl.*14
buddha: a. m. [bujjhati の pp.]*15 覚った, 目覚めたる, 覚知せる; 覚者, 仏陀, 仏
bujjhati: =bodhati [√budh(a)]*16 覚る, 目覚む
uppādo: uppāda の nom. sg.
uppāda: m. [ud-pad*17-a] 生起, 生
ud-: pref. 上方に, 上に, 昇って, 前へ*18
√pad(a): 行く, 動く, 近づく, 得る, 道
-a: 名詞・形容詞を形成する*19
sukhā: sukha の nom. sg. f.*20
saddhamma-desanā: saddhamma-desana の nom. pl.
saddhamma: m. [sat-dhamma] 正法, 妙法
sat: =sant a. [atthi の ppr.]*21 ありつつ, 存在の; 善なる
atthi: [√as(a)]*22 ある, 存在する
dhamma: [dhar*23-ma] m. n. 法, 教法, 真理, 正義
√dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*24
desanā: f. [dis*25-ana*26] 宣説, 説示, 教説, 指示, 懺悔
√dis(a): [Sk. diś] 示す, 指す
-ana: 名詞・形容詞を形成する*27
saṅghassa: saṅgha の gen. sg.
saṅgha: m. 衆, 衆団, 僧伽, 僧, 僧団, 教団, 和合衆
sāmaggī: f. [<samagga] 和合, 和合集, 一致 nom. sg.
samagga: a. [saṃ*28-agga] 和合せる, 統一の
saṃ-: =sam- pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に. 強意*29
agga: a. 第一, 最高, 最上, 首位, 頂点
samaggānaṃ: samagga の gen. pl.*30
tapo: tapas の acc. sg.*31
tapas: m. [tap-as] 苦行, 鍛練
√tap(a): 熱する, 温める, 苦しめる, 苦痛
-as: 名詞を形成する*32