蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

ダンマパダで学ぶパーリ語 174 (391. 392.)

391.

Yassa kāyena vācāya manasā n'atthi dukkaṭaṃ,

所の者 身で  言で  意で  否/ある  悪作が

saṃvutaṃ tīhi ṭhānehi, tamahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ.

御せる   三で ある  そを/我は  言ふ  婆羅門と

(身によれる、ことばによれる、意によれる悪作(あくさ)のあること無く、(その)三つ(身口意)によりて御しある者、そを我は婆羅門と言ふ。)

身にも、ことばにも、心にも、悪い事を為さず、三つのところについてつつしんでいる人、──かれをわれは〈バラモン〉と呼ぶ。

 yassa: ya の gen. sg. m.*1

  ya: pron. rel. 所のもの

 kāyena: kāya の ins. sg.

  kāya: m. 身, 身体, 集まり

 vācāya: vācā の ins. sg.*2

  vācā: f. [vac*3-ā] 語, 言

   √vac(a): 語, 言

   : 女性名詞を形成する*4

 manasā: manas の ins. sg.*5

  manas: n. [man-as] 意, 心

   √man(u): 思う, 考える, 見なす, 誇る, 知る

   -as: 名詞を形成する*6

 n'atthi: na*7 + atthi

  na: adv. なし

  atthi: [√as(a)]*8 ある, 存在する

 dukkaṭaṃ: dukkaṭa の nom. sg.

  dukkaṭa: =dukkata  [du-kata*9] n. 悪作, 突吉羅

   du-: pref. 悪き, 難き

   kata: [karoti の pp.]*10  なされたる, 為作せる, 行作の

    karoti: [√kar(a), Sk. kṛ]*11 なす, 行う, 作る

 saṃvutaṃ: saṃvuta の acc. sg. m.

  saṃvuta: a. [saṃ-vu の pp.]*12 防護せる, 制御せる; 閉じたる, 結べる

    saṃ-: =sam-  pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に*13

    √vu: [Sk. vṛ] 抑制する, まもる

 tīhi: tayo の ins. pl.*14

  tayo: num. 三

 ṭhānehi: ṭhāna の ins. pl.

  ṭhāna: n. [ṭhā-na] 処. 場所, 住処, 在定, 状態, 点, 理由, 原因, 道理

   √ṭhā: [Sk. ṣṭhā] 立つ, 立ち止まる, 存在する, ある状態でいる

   -na: 名詞を形成する*15

 tamahaṃ: taṃ*16 + ahaṃ

  taṃ: ta の acc. sg. m.*17

   ta: pron. それ

  ahaṃ: pron. 私は, 私が  nom. sg.*18

 brūmi: brūti の 1sg.*19

  brūti: [√brū] 言う, 告げる, のベる

 brāhmaṇaṃ: brāhmaṇa の acc. sg.*20

  brāhmaṇa: m. 婆羅門, 婆羅門族

 

392.

Yamhā dhammaṃ vijāneyya sammā-sambuddha-desitaṃ,

誰よりか  法を  了知せば  正しく完全に覚れる者により示されたる

sakkaccaṃ taṃ namasseyya, aggi-huttaṃ va brāhmaṇo.

恭しく   其を  礼拝すべし  祭火に  如く  婆羅門が

(正しく完全に覚れる者により示されたる法を、誰よりか了知せば、そを恭しく礼拝すべし。婆羅門が祭火にするが如く。)

正しく覚った人(=ブッダ)の説かれた教えを、はっきりといかなる人から学び得たのであろうとも、その人を恭しく敬礼せよ、──バラモンが祭りの火を恭しく尊ぶように。

 yamhā: ya の abl. sg. m.*21

 dhammaṃ: dhamma の acc. sg.

  dhamma: [dhar*22-ma] m. n. 法, 教法, 真理, 正義

   √dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す

   -ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*23

 vijāneyya: vijānāti の opt.*24

  vijānāti: [vi-jānāti] 了知す, 了別す, 識知す

   vi-: pref. ばらばらに, 離れて, ~なしに. 分離, 相違, 分散を意味する*25

   jānāti: [√jā]*26 知る

 sammā-sambuddha-desitaṃ: sammā-sambuddha-desita の acc. sg. m.

  sammā: adv. 正しく, 完全に

  sambuddha: a. m. [sambujjhati の pp.]*27 よく覚れる, 正覚者, 等覚者

   sambujjhati: [saṃ-bujjhati] よく覚る, 正覚す

    bujjhati: =bodhati  [√budh(a)]*28 覚る, 目覚む

  desita: a. [deseti の pp.]*29 説示されたる, 説明されたる

   deseti: [disati の caus.]*30 示す, 指示す, 教示す, 懺悔す

    disati: [√dis(a), Sk. diś] 示す, 指す

 sakkaccaṃ: =sakkacca  adv. [sakkaroti の ger.]*31 恭敬して, 尊敬して, 恭しく

  sakkaroti: [sat*32-karoti] 恭敬す, 尊敬す

   sat: =sant  a. [atthi の ppr.]*33 ありつつ, 存在の; 善なる

 namasseyya: namassati の opt.*34

  namassati: [namas の denom.]*35 礼拝す, 拝む

   namas: n. [nam-as] 南無, 礼拝, 頂礼

    √nam(u): 礼拝する, 辞儀する, 曲げる, 屈する

 aggi-huttaṃ: aggi-hutta の acc. sg.

  aggi-hutta: 火祀, 事火法, 祭火

   aggi: m. [agg-i] 火, 火神, 火天  nom. sg.

    √agg(a): [Sk. agni] 曲がりくねって動く

    -i: 名詞・形容詞を形成する*36

   hutta: n. [hu-ta*37] 供犠, 供物

    √hu: 供養する, 捧げる, 供犠

    -ta: 名詞を形成する*38

 va: =iva  indecl. 如く