391.
Yassa kāyena vācāya manasā n'atthi dukkaṭaṃ,
所の者 身で 言で 意で 否/ある 悪作が
saṃvutaṃ tīhi ṭhānehi, tamahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ.
御せる 三で ある そを/我は 言ふ 婆羅門と
(身によれる、ことばによれる、意によれる悪作(あくさ)のあること無く、(その)三つ(身口意)によりて御しある者、そを我は婆羅門と言ふ。)
身にも、ことばにも、心にも、悪い事を為さず、三つのところについてつつしんでいる人、──かれをわれは〈バラモン〉と呼ぶ。
yassa: ya の gen. sg. m.*1
ya: pron. rel. 所のもの
kāyena: kāya の ins. sg.
kāya: m. 身, 身体, 集まり
vācāya: vācā の ins. sg.*2
vācā: f. [vac*3-ā] 語, 言
√vac(a): 語, 言
-ā: 女性名詞を形成する*4
manasā: manas の ins. sg.*5
manas: n. [man-as] 意, 心
√man(u): 思う, 考える, 見なす, 誇る, 知る
-as: 名詞を形成する*6
n'atthi: na*7 + atthi
na: adv. なし
atthi: [√as(a)]*8 ある, 存在する
dukkaṭaṃ: dukkaṭa の nom. sg.
dukkaṭa: =dukkata [du-kata*9] n. 悪作, 突吉羅
du-: pref. 悪き, 難き
kata: [karoti の pp.]*10 なされたる, 為作せる, 行作の
karoti: [√kar(a), Sk. kṛ]*11 なす, 行う, 作る
saṃvutaṃ: saṃvuta の acc. sg. m.
saṃvuta: a. [saṃ-vu の pp.]*12 防護せる, 制御せる; 閉じたる, 結べる
saṃ-: =sam- pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に*13
√vu: [Sk. vṛ] 抑制する, まもる
tīhi: tayo の ins. pl.*14
tayo: num. 三
ṭhānehi: ṭhāna の ins. pl.
ṭhāna: n. [ṭhā-na] 処. 場所, 住処, 在定, 状態, 点, 理由, 原因, 道理
√ṭhā: [Sk. ṣṭhā] 立つ, 立ち止まる, 存在する, ある状態でいる
-na: 名詞を形成する*15
tamahaṃ: taṃ*16 + ahaṃ
taṃ: ta の acc. sg. m.*17
ta: pron. それ
ahaṃ: pron. 私は, 私が nom. sg.*18
brūmi: brūti の 1sg.*19
brūti: [√brū] 言う, 告げる, のベる
brāhmaṇaṃ: brāhmaṇa の acc. sg.*20
brāhmaṇa: m. 婆羅門, 婆羅門族
392.
Yamhā dhammaṃ vijāneyya sammā-sambuddha-desitaṃ,
誰よりか 法を 了知せば 正しく完全に覚れる者により示されたる
sakkaccaṃ taṃ namasseyya, aggi-huttaṃ va brāhmaṇo.
恭しく 其を 礼拝すべし 祭火に 如く 婆羅門が
(正しく完全に覚れる者により示されたる法を、誰よりか了知せば、そを恭しく礼拝すべし。婆羅門が祭火にするが如く。)
正しく覚った人(=ブッダ)の説かれた教えを、はっきりといかなる人から学び得たのであろうとも、その人を恭しく敬礼せよ、──バラモンが祭りの火を恭しく尊ぶように。
yamhā: ya の abl. sg. m.*21
dhammaṃ: dhamma の acc. sg.
dhamma: [dhar*22-ma] m. n. 法, 教法, 真理, 正義
√dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*23
vijāneyya: vijānāti の opt.*24
vijānāti: [vi-jānāti] 了知す, 了別す, 識知す
vi-: pref. ばらばらに, 離れて, ~なしに. 分離, 相違, 分散を意味する*25
jānāti: [√jā]*26 知る
sammā-sambuddha-desitaṃ: sammā-sambuddha-desita の acc. sg. m.
sammā: adv. 正しく, 完全に
sambuddha: a. m. [sambujjhati の pp.]*27 よく覚れる, 正覚者, 等覚者
sambujjhati: [saṃ-bujjhati] よく覚る, 正覚す
bujjhati: =bodhati [√budh(a)]*28 覚る, 目覚む
desita: a. [deseti の pp.]*29 説示されたる, 説明されたる
deseti: [disati の caus.]*30 示す, 指示す, 教示す, 懺悔す
disati: [√dis(a), Sk. diś] 示す, 指す
sakkaccaṃ: =sakkacca adv. [sakkaroti の ger.]*31 恭敬して, 尊敬して, 恭しく
sakkaroti: [sat*32-karoti] 恭敬す, 尊敬す
sat: =sant a. [atthi の ppr.]*33 ありつつ, 存在の; 善なる
namasseyya: namassati の opt.*34
namassati: [namas の denom.]*35 礼拝す, 拝む
namas: n. [nam-as] 南無, 礼拝, 頂礼
√nam(u): 礼拝する, 辞儀する, 曲げる, 屈する
aggi-huttaṃ: aggi-hutta の acc. sg.
aggi-hutta: 火祀, 事火法, 祭火
aggi: m. [agg-i] 火, 火神, 火天 nom. sg.
√agg(a): [Sk. agni] 曲がりくねって動く
-i: 名詞・形容詞を形成する*36
hutta: n. [hu-ta*37] 供犠, 供物
√hu: 供養する, 捧げる, 供犠
-ta: 名詞を形成する*38
va: =iva indecl. 如く