87.
Paramaṃ paramanti yo'dha ñatvā
最上なるを 最上/と 所の/此界に 知りて
akkhāti vibhajati idh'eva dhammaṃ,
説く 判別す 此界に/正に 法を
taṃ kaṅkhachidaṃ muniṃ anejaṃ,
其を 疑惑を断つ 牟尼を 不動の
dutiyaṃ bhikkhunamāhu magga-desiṃ.
第二の 比丘等の/言ふ 道の説示者と
(此界に於いて最上なるを最上と知りて、正に此界に法を説き判別せる者、疑惑を絶ち不動なるその牟尼を、比丘らの内の第二の、道の説示者と言ふ。)
この世で最高のものを最高のものであると知り、ここで法を説き判別する人、疑いを絶ち欲念に動かされない聖者を、修行者たちのうちで第二の〈道を説く者〉と呼ぶ。
paramaṃ: parama の acc. sg. m.
parama: a. [para の最上級] 最高の, 最上の, 最勝の, 第一の
para: a. 他の, 彼方の, 上の
paramanti: paramaṃ*1 + ti
ti: ind. [iti の略] と, かく
yo'dha: yo + idha*2
yo: ya の nom. sg. m.*3
ya: pron. rel. 所のもの
idha: =idhaṃ adv. ここに, 此界に
ñatvā: ñā の ger.*4
√ñā: =jñā, jā 知る
akkhāti: [ā-khā*5] 告げる, 話す
√khā: [Sk. khyā] 告げる, 説く
vibhajati: [vi-bhaj] 分別す, 解釈す, 分配す
vi-: pref. ばらばらに, 離れて, ~なしに. 分離, 相違, 分散を意味する. 強意*6
√bhaj(a): 共有する, 配る, 分ける
idh'eva: idha*7 + eva
eva: adv. が, こそ, のみ, だけ, さえ, なお. 強意
dhammaṃ: dhamma の acc. sg.
dhamma: [dhar*8-ma] m. n. 法, 教法, 真理, 正義
√dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*9
taṃ: ta の acc. sg. m.*10
ta: pron. それ
kaṅkhachidaṃ: kaṅkhachida の acc. sg.
kaṅkhachida: kaṅkhā*11-chida
kaṅkhā: f. 疑, 疑惑, 期待
chida: a. [chid-a] 破壊する, 破る
√chid(a): [Sk. ched] 二つに分ける, 切る, 分割する
-a: 名詞・形容詞を形成する*12
muniṃ: muni の acc. sg.
muni: m. [mun-i] 牟尼, 寂黙, 黙者, 賢人
√mun(a): [Sk. muṇ] 誓約
-i: 名詞・形容詞を形成する*13
anejaṃ: aneja の acc. sg.
aneja: a. [an-ej-a] 不動の, 無動著の, 無貪愛の
an-: =a- pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では an となる
√ej(a): 震える, 動く, 輝く
dutiyaṃ: dutiya の acc. m.
dutiya: num. a. m. 第二, 第二者, 伴侶, 同伴者
bhikkhunamāhu: bhikkhunaṃ*14 + āhu
bhikkhunaṃ: bhikkhu の gen. pl.*15
bhikkhu: m. [bhikkh-u] 比丘, 苾芻, 乞者, 乞食者
√bhikkh(a): [Sk. bhikṣ] 乞求, 乞食
-u: 名詞・形容詞を形成する*16
āhu: āha の pl.
āha: [√ah(a)]*17 言う, 言った
√ah: 言う
magga-desiṃ: magga-desin の acc. sg. m.
magga: m. [magg-a] 道, 道路, 正道
√magg(a): [Sk. mṛg] 探し求める, 追跡する
desin: a. [dis*18-in] 説示ある, 説示者
88.
Yo dhamma-pade sudesite
所の者 法句に よく説かれたる
magge jīvati saññato satīmā,
道に 生く 自制せる 具念の
anavajja-padāni sevamāno,
罪無き言葉を 奉ぜるは
tatiyaṃ bhikkhunamāhu magga-jīviṃ.
第三の 比丘等の/言ふ 道に生くる者と
(よく説かれたる法句たる道に生き、自制せる具念の、罪無き言葉を奉ぜる者は、比丘らの内の第三の、道により生くる者と言ふ。)
みごとに説かれた〈理法にかなったことば〉である〈道〉に生き、みずから制し、落ち着いて気をつけていて、とがのないことばを奉じている人を、修行者たちのうちで第三の〈道によって生きる者〉と呼ぶ。
dhamma-pade: dhamma-pada の loc. sg.
dhamma-pada: 法句, 法足, 法迹
pada: n. [pad-a] 足; 足跡, 歩; 句, 語法; 場所
√pad(a): 行く, 動く, 近づく, 得る, 道
sudesite: sudesita の loc. sg.
sudesita: a. [su-desita] よく説かれた, 善説の
su-: pref. よき, 善き, 良き, 妙(たえ)なる, 易き, 極めて
desita: a. [deseti の pp.]*19 説示されたる, 説明されたる
deseti: [disati の caus.]*20 示す, 指示す, 教示す, 懺悔す
disati: [√dis(a), Sk. diś] 示す, 指す
magge: magga の loc. sg.
jīvati: [√jīv(a)] 生きる, 生存する
saññato: saññata の nom. sg. m.
saññata: =saṃyata a. [saṃyamati の pp.]*21 抑制せる, 制御せる, 自制せる
saṃyamati: [saṃ-yamati] 抑制す, 自制す
saṃ-: =sam- pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に. 強意*22
yamati: [√yam(u)] 自制す, 抑制す
satīmā: satimant の nom. sg. m.
satimant: a. [sati-mant] 具念の, 有念者
sati: f. [sar*23-ti] 念, 憶念, 記憶, 正念
-mant: =mat 所有形容詞を形成する*24
anavajja-padāni: anavajja-pada の acc. pl.
anavajja: a. [an-avajja] 無罪の, 無過の
avajja: a. n. 罪の, 非難さるべき, 罪, 過失
sevamāno: sevati の ppr. nom. sg. m.*25
sevati: [√sev] 仕える, 従う, 依付す, 親しむ
tatiyaṃ: tatiya の acc. m.
tatiya: num. a. 第三の
magga-jīviṃ: magga-jīvin の acc. sg. m.
jīvin: a. [jīv-in] 生命ある, 生存する
√jīv(a): 生きる
-in: 所有形容詞・名詞を形成する*26