蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

スッタニパータで学ぶパーリ語 47 (87. 88.)

87.

Paramaṃ paramanti yo'dha ñatvā

最上なるを 最上/と 所の/此界に 知りて

akkhāti vibhajati idh'eva dhammaṃ,

説く  判別す  此界に/正に 法を

taṃ kaṅkhachidaṃ muniṃ anejaṃ,

其を  疑惑を断つ  牟尼を  不動の

dutiyaṃ bhikkhunamāhu magga-desiṃ.

第二の  比丘等の/言ふ   道の説示者と

(此界に於いて最上なるを最上と知りて、正に此界に法を説き判別せる者、疑惑を絶ち不動なるその牟尼を、比丘らの内の第二の、道の説示者と言ふ。)

この世で最高のものを最高のものであると知り、ここで法を説き判別する人、疑いを絶ち欲念に動かされない聖者を、修行者たちのうちで第二の〈道を説く者〉と呼ぶ。

 paramaṃ: parama の acc. sg. m.

  parama: a. [para の最上級] 最高の, 最上の, 最勝の, 第一の

   para: a. 他の, 彼方の, 上の

 paramanti: paramaṃ*1 + ti

  ti: ind. [iti の略] と, かく

 yo'dha: yo + idha*2

  yo: ya の nom. sg. m.*3

   ya: pron. rel. 所のもの

  idha: =idhaṃ  adv. ここに, 此界に

 ñatvā: ñā の ger.*4

  √ñā: =jñā, jā  知る

 akkhāti: [ā-khā*5] 告げる, 話す

  √khā: [Sk. khyā] 告げる, 説く

 vibhajati: [vi-bhaj] 分別す, 解釈す, 分配す

  vi-: pref. ばらばらに, 離れて, ~なしに. 分離, 相違, 分散を意味する. 強意*6

  √bhaj(a): 共有する, 配る, 分ける

 idh'eva: idha*7 + eva

  eva: adv. が, こそ, のみ, だけ, さえ, なお. 強意

 dhammaṃ: dhamma の acc. sg.

  dhamma: [dhar*8-ma] m. n. 法, 教法, 真理, 正義

   √dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す

   -ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*9

 taṃ: ta の acc. sg. m.*10

  ta: pron. それ

 kaṅkhachidaṃ: kaṅkhachida の acc. sg.

  kaṅkhachida: kaṅkhā*11-chida

   kaṅkhā: f. 疑, 疑惑, 期待

   chida: a. [chid-a] 破壊する, 破る

    √chid(a): [Sk. ched] 二つに分ける, 切る, 分割する

    -a: 名詞・形容詞を形成する*12

 muniṃ: muni の acc. sg.

  muni: m. [mun-i] 牟尼, 寂黙, 黙者, 賢人

   √mun(a): [Sk. muṇ] 誓約

   -i: 名詞・形容詞を形成する*13

 anejaṃ: aneja の acc. sg.

  aneja: a. [an-ej-a] 不動の, 無動著の, 無貪愛の

   an-: =a-  pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では an となる

   √ej(a): 震える, 動く, 輝く

 dutiyaṃ: dutiya の acc. m.

  dutiya: num. a. m. 第二, 第二者, 伴侶, 同伴者

 bhikkhunamāhu: bhikkhunaṃ*14 + āhu

  bhikkhunaṃ: bhikkhu の gen. pl.*15

   bhikkhu: m. [bhikkh-u] 比丘, 苾芻, 乞者, 乞食者

    √bhikkh(a): [Sk. bhikṣ] 乞求, 乞食

    -u: 名詞・形容詞を形成する*16

  āhu: āha の pl.

   āha: [√ah(a)]*17 言う, 言った

    √ah: 言う

 magga-desiṃ: magga-desin の acc. sg. m.

  magga: m. [magg-a] 道, 道路, 正道

   √magg(a): [Sk. mṛg] 探し求める, 追跡する

  desin: a. [dis*18-in] 説示ある, 説示者 

 

88.

Yo dhamma-pade sudesite

所の者 法句に よく説かれたる

magge jīvati saññato satīmā,

道に  生く 自制せる 具念の

anavajja-padāni sevamāno,

罪無き言葉を   奉ぜるは

tatiyaṃ bhikkhunamāhu magga-jīviṃ.

第三の  比丘等の/言ふ  道に生くる者と

(よく説かれたる法句たる道に生き、自制せる具念の、罪無き言葉を奉ぜる者は、比丘らの内の第三の、道により生くる者と言ふ。)

みごとに説かれた〈理法にかなったことば〉である〈道〉に生き、みずから制し、落ち着いて気をつけていて、とがのないことばを奉じている人を、修行者たちのうちで第三の〈道によって生きる者〉と呼ぶ。

 dhamma-pade: dhamma-pada の loc. sg.

  dhamma-pada: 法句, 法足, 法迹

   pada: n. [pad-a] 足; 足跡, 歩; 句, 語法; 場所

    √pad(a): 行く, 動く, 近づく, 得る, 道

 sudesite: sudesita の loc. sg.

  sudesita: a. [su-desita] よく説かれた, 善説の

   su-: pref. よき, 善き, 良き, 妙(たえ)なる, 易き, 極めて

   desita: a. [deseti の pp.]*19 説示されたる, 説明されたる

    deseti: [disati の caus.]*20 示す, 指示す, 教示す, 懺悔す

     disati: [√dis(a), Sk. diś] 示す, 指す

 magge: magga の loc. sg.

 jīvati: [√jīv(a)] 生きる, 生存する

 saññato: saññata の nom. sg. m.

  saññata: =saṃyata  a. [saṃyamati の pp.]*21 抑制せる, 制御せる, 自制せる

   saṃyamati: [saṃ-yamati] 抑制す, 自制す

    saṃ-: =sam-  pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に. 強意*22

    yamati: [√yam(u)] 自制す, 抑制す

 satīmā: satimant の nom. sg. m.

  satimant: a. [sati-mant] 具念の, 有念者

   sati: f. [sar*23-ti] 念, 憶念, 記憶, 正念

   -mant: =mat  所有形容詞を形成する*24

 anavajja-padāni: anavajja-pada の acc. pl.

  anavajja: a. [an-avajja] 無罪の, 無過の

   avajja: a. n. 罪の, 非難さるべき, 罪, 過失

 sevamāno: sevati の ppr. nom. sg. m.*25

  sevati: [√sev] 仕える, 従う, 依付す, 親しむ

 tatiyaṃ: tatiya の acc. m.

  tatiya: num. a. 第三の

 magga-jīviṃ: magga-jīvin の acc. sg. m.

  jīvin: a. [jīv-in] 生命ある, 生存する

   √jīv(a): 生きる

   -in: 所有形容詞・名詞を形成する*26