5. Cunda Sutta チュンダ (チュンダの経)
sutta: [Sk. sūtra<siv] 経, 契経, 修多羅[九分教の一]; 戒経, 戒本 [=pāṭimokkha]; 糸, 繩墨
√siv(u): 縫い合わせる, 集める
83.
"Pucchāmi muniṃ pahūta-paññaṃ,"
問ふ 牟尼に 広慧者に
iti Cundo kammāra-putto,
と チュンダが 鍛冶工の息子が
"buddhaṃ dhammassāmiṃ vīta-taṇhaṃ
覚者に 法主に 渇欲を離れたるに
dipad'uttamaṃ sārathīnaṃ pavaraṃ,
両足尊に 御者等の 最頂者に
kati loke samaṇā, tadiṅgha brūhi."
如何程か 世に 沙門等は 其をいざ 説き給へ
(「偉大な智慧ある牟尼に問ふ」と、鍛冶工の息子チュンダ。「覚者、法の主、渇欲を離れたる者、両足尊、御者等の内で最上の者に。世の沙門らは如何ほどあるか、そをいざ説き給へ」)
鍛冶工の子チュンダがいった、「偉大な知慧ある聖者・目ざめた人・真理の主・妄執を離れた人・人類の最上者・すぐれた御者に、わたくしはおたずねします。──世間にはどれだけの修行者がいますか? どうぞお説きください。」
pucchāmi: pucchati の 1sg.*1
pucchati: [√pucch(a), Sk. prach] 問う, 質問す, たずねる; 与える
muniṃ: muni の acc. sg.
muni: m. [mun-i] 牟尼, 寂黙, 黙者, 賢人
√mun(a): [Sk. muṇ] 誓約
-i: 名詞・形容詞を形成する*2
pahūta-paññaṃ: pahūta-pañña の acc. sg.
pahūta-pañña: 広慧者
pahūta: a. [pahoti の pp.]*3 多くの, 広大の, 広長の
pahoti: [pa-hoti] 生ずる, 発生する; 出来る, 可能である
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*4
hoti: =bhavati [√hū]*5 ある, 存在する
pañña: a. [pa-ñā*6-a] 慧ある, かしこき, 智慧者
√ñā: =jñā, jā 知る
iti: indecl. かく, ~と, とて
Cundo: Cunda の nom. sg. m.
kammāra-putto: kammāra-putta の nom. sg.
kammāra: m. 鍛工, 鍛冶屋, 金銀工
putta: m. 子, 子息; 男児
buddhaṃ: buddha の acc. sg.
buddha: a. m. [bujjhati の pp.]*7 覚った, 目覚めたる, 覚知せる; 覚者, 仏陀, 仏
bujjhati: =bodhati [√budh(a)]*8 覚る, 目覚む
dhammassāmiṃ: dhammassāmin の acc. sg.
dhammassāmin: dhamma-sāmin*9 法主, 法王
dhamma: [dhar*10-ma] m. n. 法, 教法, 真理, 正義
√dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*11
sāmin: =suvāmin m. 所有者, 支配者, 主人, 夫
vīta-taṇhaṃ: vīta-taṇhā の acc. sg.
vīta-taṇhā: 離愛の
vīta: a. [vi-ita*12] 離れたる, なき
vi-: pref. ばらばらに, 離れて, ~なしに. 分離, 相違, 分散を意味する. 強意*13
ita: eti の pp.*14
eti: [√i]*15 行く
taṇhā: f. [Sk. tṛṣṇā] 渇愛, 愛, 愛欲
tṛṣṇā: 渇き; 欲望, 貪欲
dipad'uttamaṃ: dipad'uttama の acc. sg.
dipad'uttama: dipada*16-uttama
dipada: =dipādaka m. [di-pada] 二足, 両足者, 人間
di-: ニ, 両
pada: n. [pad-a] 足; 足跡, 歩; 句, 語法; 場所
√pad(a): 行く, 動く, 近づく, 得る, 道
-a: 名詞・形容詞を形成する*17
uttama: a. [ud の最上級*18] 最上の, 最高の
ud-: pref. 上方に, 上に, 昇って, 前へ*19
sārathīnaṃ: sārathi の gen. pl.*20
sārathi: m. [<sa-ratha] 御者, 調御者
sa: =saha prep. 共に, 有する, 同じ
ratha: m. 車, 車駕
pavaraṃ: pavara の acc. sg. m.
pavara: a. [pa-vara] 最頂の, もっともすぐれた
vara: a. m. n. すぐれた, 高貴の, 最上の; 恵与; 福利, 願望
kati: interr. pron. [ka-ti] いくら, どれだけ(の数)
ka: pron. inter. 誰? 何?
-ti: 代名詞に付き様子を表わす副詞を形成する*21
loke: loka の loc. sg.
loka: m. 世, 世間, 世界
samaṇā: samaṇa の nom. pl.
samaṇa: m. [sam-ana] 沙門
√sam(u): [Sk. śram] 勤息
-ana: 名詞・形容詞を形成する*22
tadiṅgha: ta-d*23-iṅgha
ta: pron. それ
iṅgha: interj. いざ
brūhi: brūti の imper. 2sg.*24
brūti: [√brū] 言う, 告げる, のベる
84.
"Caturo samaṇā na pañcamo'tthi, Cundā," ti bhagavā, "te te
四の 沙門が 否 第五は/あり チュンダよ と 世尊は 汝より
āvi-karomi sakkhi-puṭṭho; magga-jino magga-desako ca,
明らかにす 証人として問われたるは 道の勝者 道の説示者 又
magge jīvati yo ca magga-dūsī."
道で 生く 所の者 又 道を汚す者
(「四の沙門ありて、第五のあること無し、チュンダよ」と、世尊。「汝より問われたる我は明らかにす。道によれる勝者と道の説示者、道に生く者と道を汚す者なり」)
師(ブッダ)は答えた、「チュンダよ。四種の修行者があり、第五の者はありません。面と向かって問われたのだから、それらをあなたに明かしましょう。──〈道による勝者〉と〈道を説く者〉と〈道において生活する者〉と及び〈道を汚す者〉とです。」
caturo: catu の nom. m.*25
catu: num. a. 四
na: adv. なし
pañcamo'tthi: pañcamo + atthi*26
pañcamo: pañcama の nom. m.*27
pañcama: =pañcamaka a. [pañca-ma] 第五の
pañca: num. a. 五
-ma: 序数を形成する*28
atthi: [√as(a)]*29 ある, 存在する
Cundā: =Cunda*30 voc. sg.
ti: ind. [iti の略] と, かく
bhagavā: bhagavat の nom. sg.*31
bhagavat: =bhagavant m. [bhaga-vat] 世尊, 薄伽梵, 仏
bhaga: m. [bhaj*32-a] 幸運, 福運
√bhaj(a): 尊崇, 崇拝, 敬慕
-vat: =vant 所有形容詞を形成する*33
te: tvaṃ の abl. sg.*34
tvaṃ: 汝, 君
āvi-karomi: āvi-karoti の 1sg.*35
āvi-karoti: 明らかならしむ
āvi: adv. 明瞭に, 露わに, 明顕に
karoti: [√kar(a), Sk. kṛ]*36 なす, 行う, 作る
sakkhi-puṭṭho: sakkhi-puṭṭha の nom. sg. m.
sakkhi-puṭṭha: 証人として問われたる
sakkhi: m. [sa*37-akkhi] 証人
sa: =saha prep. 共に, 有する, 同じ
akkhi: n. 眼
puṭṭha: pucchati の pp.*38 尋問せる
pucchati: [√pucch(a), Sk. prach] 問う, 質問す, たずねる; 与える
magga-jino: magga-jina の nom. sg. m.
magga-jina: 道による勝者
magga: m. [magg-a] 道, 道路, 正道
√magg(a): [Sk. mṛg] 探し求める, 追跡する
jina: =jita a. [jayati の pp.]*39 打ち勝てる, 征服せる
jayati: [√ji]*40 勝つ, 征服す
magga-desako: magga-desaka の nom. sg. m.
magga-desaka: 道の説示者
desaka: a. n. [dis*41-aka] 指示, 教示, 教訓
√dis(a): [Sk. diś] 示す, 指す
-aka: 動作名詞・形容詞を形成する*42
ca: conj. と, そして, また
magge: magga の loc. sg.
jīvati: [√jīv(a)] 生きる, 生存する
yo: ya の nom. sg. m.*43
ya: pron. rel. 所のもの
magga-dūsī: magga-dūsin の nom. sg. m.*44
magga-dūsin: 道を汚す者
dūsin: a. m. [dus*45-in] 触嬈者 [悪魔]
√dus(a): [Sk. duṣ] 悪くなる, 駄目になる, 害を受ける
-in: 所有形容詞・名詞を形成する*46