415.
Yo'dha kāme pahatvāna, anāgāro paribbaje,
所の者/此界に 欲を 断ちて 出家せる 遍歴すべかる
kāma-bhava-parikkhīṇaṃ, tamahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ.
欲楽の有を消尽せる 其を/我は 言ふ 婆羅門と
(此界に欲楽を断ちて、出家し遍歴すべかりて、欲楽の有(う)の消尽せるを、そを我は婆羅門と言ふ。)
この世の欲望を断ち切り、出家して遍歴し、欲望の生活の尽きた人、──かれをわれは〈バラモン〉と呼ぶ。
yo'dha: yo + idha*1
yo: ya の nom. sg. m.*2
ya: pron. rel. 所のもの
idha: =idhaṃ adv. ここに, 此界に
kāme: kāma の acc. pl.
kāma: m. n. [kam*3-a] 欲, 愛欲, 欲念, 欲情, 欲楽
√kam(u): 欲す, 楽しむ
pahatvāna: pajahāti の ger.*4
pajahāti: =pajahati [pa-jahāti] 捨てる, 捨断する, 断ずる
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*5
jahāti: =jahati [√hā]*6 捨つ, 断ず
anāgāro: anāgāra の nom. sg.
anāgāra: a. [an-agāra] 非家, 出家
an-: =a- pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では an となる
agāra: n. 家, 舎, 家屋, 俗家
paribbaje: paribbajati の opt.*7
paribbajati: [pari-vaj*8] 遊行す, 遍歴す
pari-: pref. 円, 遍ねく, 完全に, 強意. 完全性などを意味する*9
√vaj(a): [Sk. vraj] 刈り整える, 備える, 矢羽根をつける, 行く, 動く
kāma-bhava-parikkhīṇaṃ: kāma-bhava-parikkhīṇa の acc. sg. m.
kāma-bhava-parikkhīṇa: 欲楽の有を遍尽せる
kāma: m. n. [kam*10-a] 欲, 愛欲, 欲念, 欲情, 欲楽
bhava: m. [bhū-a*11] 有, 存在, 生存, 繁栄, 幸福
√bhū: ある, 存す
parikkhīṇa: a. [parikkhīyati の pp.]*12 消尽した, 滅尽した
parikkhīyati: [pari-khī*13]*14 消尽す, 滅尽す
pari-: pref. 円, 遍ねく, 完全に, 強意. 完全性などを意味する*15
√khī: 消耗, 破壊
tamahaṃ: taṃ*16 + ahaṃ
taṃ: ta の acc. sg. m.*17
ta: pron. それ
ahaṃ: pron. 私は, 私が nom. sg.*18
brūmi: brūti の 1sg.*19
brūti: [√brū] 言う, 告げる, のベる
brāhmaṇaṃ: brāhmaṇa の acc. sg.*20
brāhmaṇa: m. 婆羅門, 婆羅門族
416.
Yo'dha taṇhaṃ pahantvāna, anāgāro paribbaje,
所の者/此界に 渇欲を 断ちて 出家せる 遍歴すべかる
taṇhā-bhava-parikkhīṇaṃ, tamahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ.
渇欲の有の消尽せる 其を/我は 言ふ 婆羅門と
(此界に渇欲を断ちて、出家し遍歴すべかりて、渇欲の有の消尽せるを、そを我は婆羅門と言ふ。)
この世の愛執を断ち切り、出家して遍歴し、愛執の生存の尽きた人、──かれをわれは〈バラモン〉と言ふ。
taṇhaṃ: taṇhā の acc. sg.
taṇhā: f. [Sk. tṛṣṇā] 渇愛, 愛, 愛欲
tṛṣṇā: 渇き; 欲望, 貪欲
taṇhā-bhava-parikkhīṇaṃ: taṇhā-bhava-parikkhīṇa の acc. sg.
taṇhā-bhava-parikkhīṇa: 渇欲の有を遍尽せる