411.
Yass'ālayā na vijjanti, aññāya akathaṃkathī,
所の者/執著が 否 ある 了知して 疑ひ無き
amat'ogadhamanuppattaṃ, tamahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ.
不死の境地に深入せる 其を/我は 言ふ 婆羅門と
(執着のあること無く、了知して疑ふこと無く、不死の境地に深入せるを、そを我は婆羅門と言ふ。)
こだわりあることなく、さとりおわって、疑惑なく、不死の底に達した人、──かれをわれは〈バラモン〉と呼ぶ。
yass'ālayā: yassa*1 + ālayā
yassa: ya の gen. sg. m.*2
ya: pron. rel. 所のもの
ālayā: ālaya の nom. pl.
ālaya: m. n. [ā-lī-a*3] 阿頼耶, 執著, 愛著, 所執処
ā-: pref. へ, で, に向かって, の近くに, までに, の限り, から離れて, じゅうに*4
√lī: 著す
-a: 名詞・形容詞を形成する*5
na: adv. なし
vijjanti: vijjati の pl.
vijjati: [vindati の pass.]*6 見出される, 知られる, 存在す
vindati: [√vid(a)]*7 知る; 見出す, 所有す
aññāya: [ā-ñā*8 の ger.]*9 了知して, 開悟して
ā-: pref. へ, で, に向かって, の近くに, までに, の限り, から離れて, じゅうに*10
√ñā: =jñā, jā 知る
akathaṃkathī: akathaṃkathin の nom. sg. m.*11
akathaṃkathin: a. [akathaṃkathā*12-in] 疑いなき
akathaṃkathā: f. [a-kathaṃkathā] 疑いなきこと, 無疑
a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不
kathaṃkathā: f. 疑惑, 猶予
-in: 所有形容詞を形成する*13
amat'ogadhamanuppattaṃ: amat'ogadhaṃ*14 + anuppattaṃ
amat'ogadhaṃ: amat'ogadha の acc. sg. m.
amat'ogadha: a. [amata*15-ogadha] 不死に深入せる
amata: a. n. [a-mata] 不死の, 不死, 甘露, 涅槃
mata: a. [marati の pp.]*16 死せる, 死者
marati: [√mar(a), Sk. mṛ] 死す
ogadha: a. [o-gāh の pp.]*17 入りたる
o-: =ava- pref. 下に, 離れて, 戻って, 外れて, 少なく. 軽視*18
√gāh(u): 飛びこむ, 深く入る, かき回す, 吸収される, 隠れる
anuppattaṃ: anuppatta の acc. sg. m.
anuppatta: =anupatta a. [anupāpuṇāti の pp.]*19 到達せる, 得た
anupāpuṇāti: [anu-pāpuṇāti] 到達す, 得る, 見出す
anu-: pref. ~にちなんで, に沿って, にしたがって, の近くで, の後ろで, ~より少なく, ~の結果, ~の下で*20
pāpuṇāti: [pa-āp]*21 得る, 達す, 到達す
pa-: pref. 前に, 先に, 強意
√āp: 行き渡る, 漲る, 得る
tamahaṃ: taṃ*22 + ahaṃ
taṃ: ta の acc. sg. m.*23
ta: pron. それ
ahaṃ: pron. 私は, 私が nom. sg.*24
brūmi: brūti の 1sg.*25
brūti: [√brū] 言う, 告げる, のベる
brāhmaṇaṃ: brāhmaṇa の acc. sg.*26
brāhmaṇa: m. 婆羅門, 婆羅門族
412.
Yo'dha puññañca pāpañca ubho saṅgamupaccagā,
所の者/此界に 福/又 悪/又 両方への 執著を/超越せる
asokaṃ virajaṃ suddhaṃ, tamahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ.
憂ひ無き 離塵の 清まれる 其を/我は 言ふ 婆羅門と
(此界で福と悪との両方への執著を超越し、憂ひ無く塵を離れ清まれるを、そを我は婆羅門と言ふ。)
この世の禍福いずれにも執著することなく、憂いなく、汚れなく、清らかな人、──かれをわれは〈バラモン〉と呼ぶ。
yo'dha: yo + idha*27
yo: ya の nom. sg. m.*28
ya: pron. rel. 所のもの
idha: =idhaṃ adv. ここに, 此界に
puññañca: puññaṃ*29 + ca
puññaṃ: puñña の acc. sg.
puñña: n. 福, 善, 福徳, 功徳
ca: conj. と, そして, また
pāpañca: pāpaṃ*30 + ca
pāpaṃ: pāpa の acc. sg.
pāpa: a. n. 悪き, 悪, 悪人
ubho: ubha の acc. dual. m.*31
ubha: pron. 両者
saṅgamupaccagā: saṅgaṃ*32 + upaccagā
saṅgaṃ: saṅga の acc. sg.
saṅga: m. [sanj*33-a] 着, 染着, 執着
√sanj(a): [Sk. sañj] 着す
upaccagā: =upaccagaṃ [upātigacchati の aor.]*34 すぎ去った, 去った, 逃げた
upātigacchati: [upa-atigacchati*35] 超える, 征服す
upa-: pref. ~に, ~に向かって, 近くに, ~と一緒に, ~のそばで, ~のように, ~まで, (apa と逆に)下に, 少なく*36
atigacchati: [ati-gacchati] すぎ行く, 超える, まさる
ati-: pref. 超えて, 横切って, 上に, 過ぎ去って, 非常に, とても (超過を表す)*37
gacchati: [√gam(u)]*38 行く
asokaṃ: asoka の acc. sg. m.
asoka: a. m. [a-soka] 無憂の, 不愁の; 無憂樹
soka: m. [suc*39-ka] 愁, 憂, うれい
√suc(a): [Sk. śuc] 愁, 憂
-ka: 名詞・形容詞を形成する*40
virajaṃ: viraja の acc. sg. m.
viraja: a. [vi-raja] 離塵の, 塵を離れた
vi-: pref. ばらばらに, 離れて, ~なしに. 分離, 相違, 分散を意味する*41
raja: n. [raj-a] 塵, 塵垢, 不浄
√raj: 貪, 染
suddhaṃ: suddha の acc. sg. m.
suddha: a. [sujjhati の pp.]*42 浄き, 清浄の, 純粋
sujjhati: [√sudh(a), Sk. śudh]*43 浄まる, 清まる