69.
Madhuṃ va maññati bālo yāva pāpaṃ na paccati,
蜜 の如く 思ひ為す 愚者は の間は 悪が 否 責めらる
yadā ca paccati pāpaṃ, atha dukkhaṃ nigacchati.
その時 又 責めらる 悪が 時に 苦を 受く
(愚者は悪が責められざるうちは蜜の如く思いなす。されど悪が責めらる時、その時には苦を受く。)
愚かな者は、悪いことを行っても、その報いの現われないあいだは、それを蜜のように思いなす。しかしその罪の報いの現われたときには、苦悩を受ける。
madhuṃ: madhu の acc. sg.
madhu: m. 蜜, 蜂蜜
va: =iva indecl. 如く
maññati: [√man(u)] 考える, 思う, 思量す
bālo: bāla の nom. sg.
bāla: a. 愚なる, 愚痴の, 無知の; 若き, 新しき
yāva: adv. prep. [ya*1-va] ~までは, ~の限りは, ~の間は
ya: pron. rel. 所のもの
-va: 時間・理由の副詞を形成する*2
pāpaṃ: pāpa の nom. sg.
pāpa: a. n. 悪き, 悪, 悪人
paccati: [pacati の pass.]*3 煮られる, 苦しめられる
pacati: [√pac(a)] 煮る, 炊く, 焼く, 責める
yadā: adv. [ya-dā] ~の時に
-dā: 時間を表す副詞を形成する*4
ca: conj. と, そして, また
atha: =atho ind. 時に, また
dukkhaṃ: dukkha の acc. sg.
dukkha: a. n. [dukkh-a] 苦, 苦痛, 苦悩
√dukkh(a): [Sk. duḥkha] 苦, 苦痛, 不快, 困難, 不安
-a: 名詞・形容詞を形成する*5
nigacchati: [ni-gacchati] 受ける, 得る, 入る, 至る
ni-: 外に, 前へ, 下に, 中に, 下方に, 中で, 下で *6
gacchati: [√gam(u)]*7 行く
70.
Māse māse kus'aggena bālo bhuñjeyya bhojanaṃ,
月に 月に 茅草の先で 愚者は 食ふべし 食物を
na so saṅkhātadhammānaṃ kalaṃ agghati soḷasiṃ.
否 其は 法の察悟者等の 小分に 値ふ 十六の
(愚者はたとひ毎月、茅草の先で食物を食ふとも、そは法の察悟者らの十六分の一にも値はず。)
愚かな者は、たとい毎月(苦行者の風習にならって一月に一度だけ)茅草の端(はし)につけて(極く少量の)食物を摂(と)るようなことをしても、(その功徳は)真理をわきまえた人々の十六分の一にも及ばない。
māse: māsa の loc. sg.
māsa: =masa m. 暦月, 月
kus'aggena: kus'agga の ins. sg.
kus'agga: [kusa*8-agga] 草の葉先
kusa: m. 草, 茅草, 吉祥草
agga: a. 第一, 最高, 最上, 首位, 頂点
bhuñjeyya: bhuñjati の opt. *9
bhuñjati: [√bhuj(a)]*10 食べる, 享受す, 受用する
bhojanaṃ: bhojana の acc. sg.
bhojana: n. [bhuj*11-ana] 食物, 食, 飲食
√bhuj(a): 食べる, 享受する, 楽しむ, 所有する
-ana: 名詞・形容詞を形成する*12
na: adv. なし
so: ta の nom. sg. m.*13 それは, 彼は
ta: pron. それ
saṅkhāta-dhammānaṃ: saṅkhāta-dhamma の gen. pl.
saṅkhāta-dhamma: 法の察悟者, 法を究めたる
saṅkhāta: a. [saṅkhāyati の pp.]*14 称する, 名付けられた; 察量せる
saṅkhāyati: [saṃ*15-khāyati] 数える, 考量す, はかる
saṃ-: =sam- pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に*16
khāyati: [√khā, Sk. khyā] 思える, 見える*17
dhamma: [dhar*18-ma] m. n. 法, 教法, 真理, 正義
√dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*19
kalaṃ: kalā の acc. sg.
kalā: f. 小部分, 十六分の一
agghati: [√aggh(a), Sk. argh] 評価させる, 価値ある, 值する
soḷasiṃ: soḷasī の acc. sg.
soḷasī: 第十六