蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

ダンマパダで学ぶパーリ語 34 (69. 70.)

69.
Madhuṃ va maññati bālo yāva pāpaṃ na paccati,

蜜  の如く 思ひ為す 愚者は の間は 悪が 否 責めらる

yadā ca paccati pāpaṃ, atha dukkhaṃ nigacchati.

その時 又 責めらる 悪が 時に  苦を  受く

(愚者は悪が責められざるうちは蜜の如く思いなす。されど悪が責めらる時、その時には苦を受く。) 

愚かな者は、悪いことを行っても、その報いの現われないあいだは、それを蜜のように思いなす。しかしその罪の報いの現われたときには、苦悩を受ける。

 madhuṃ: madhu の acc. sg.

  madhu: m. 蜜, 蜂蜜

 va: =iva  indecl. 如く

 maññati: [√man(u)] 考える, 思う, 思量す

 bālo: bāla の nom. sg.

  bāla: a. 愚なる, 愚痴の, 無知の; 若き, 新しき

 yāva: adv. prep. [ya*1-va] ~までは, ~の限りは, ~の間は

  ya: pron. rel. 所のもの

  -va: 時間・理由の副詞を形成する*2

 pāpaṃ: pāpa の nom. sg.

  pāpa: a. n. 悪き, 悪, 悪人

 paccati: [pacati の pass.]*3 煮られる, 苦しめられる

  pacati: [√pac(a)] 煮る, 炊く, 焼く, 責める

 yadā: adv. [ya-dā] ~の時に

  -dā: 時間を表す副詞を形成する*4

 ca: conj. と, そして, また

 atha: =atho  ind. 時に, また

 dukkhaṃ: dukkha の acc. sg.

  dukkha: a. n. [dukkh-a] 苦, 苦痛, 苦悩

   √dukkh(a): [Sk. duḥkha] 苦, 苦痛, 不快, 困難, 不安

   -a: 名詞・形容詞を形成する*5

 nigacchati: [ni-gacchati] 受ける, 得る, 入る, 至る

  ni-:  外に, 前へ, 下に, 中に, 下方に, 中で, 下で *6

  gacchati: [√gam(u)]*7 行く

 

70.
Māse māse kus'aggena bālo bhuñjeyya bhojanaṃ,

月に 月に 茅草の先で 愚者は 食ふべし 食物を

na so saṅkhātadhammānaṃ kalaṃ agghati soḷasiṃ.

否 其は  法の察悟者等の   小分に 値ふ 十六の

(愚者はたとひ毎月、茅草の先で食物を食ふとも、そは法の察悟者らの十六分の一にも値はず。)

愚かな者は、たとい毎月(苦行者の風習にならって一月に一度だけ)茅草の端(はし)につけて(極く少量の)食物を摂(と)るようなことをしても、(その功徳は)真理をわきまえた人々の十六分の一にも及ばない。

 māse:  māsa の loc. sg.

  māsa: =masa  m. 暦月, 月

 kus'aggena: kus'agga の ins. sg.

  kus'agga: [kusa*8-agga] 草の葉先

   kusa: m. 草, 茅草, 吉祥草

   agga:  a. 第一, 最高, 最上, 首位, 頂点

 bhuñjeyya: bhuñjati の opt. *9

  bhuñjati: [√bhuj(a)]*10 食べる, 享受す, 受用する

 bhojanaṃ: bhojana の acc. sg.

  bhojana: n. [bhuj*11-ana] 食物, 食, 飲食

   √bhuj(a): 食べる, 享受する, 楽しむ, 所有する

   -ana: 名詞・形容詞を形成する*12

 na: adv. なし

 so: ta の nom. sg. m.*13 それは, 彼は

  ta: pron. それ

 saṅkhāta-dhammānaṃ:  saṅkhāta-dhamma の gen. pl.

  saṅkhāta-dhamma: 法の察悟者, 法を究めたる

   saṅkhāta: a. [saṅkhāyati の pp.]*14 称する, 名付けられた; 察量せる

    saṅkhāyati: [saṃ*15-khāyati] 数える, 考量す, はかる

     saṃ-: =sam-  pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に*16

     khāyati: [√khā, Sk. khyā] 思える, 見える*17

  dhamma: [dhar*18-ma] m. n. 法, 教法, 真理, 正義

   √dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す

   -ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*19

 kalaṃ: kalā の acc. sg.

  kalā: f. 小部分, 十六分の一

 agghati: [√aggh(a), Sk. argh] 評価させる, 価値ある, 值する

 soḷasiṃ: soḷasī の acc. sg.

  soḷasī: 第十六