蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

ダンマパダで学ぶパーリ語 32 (64. 65.)

64.

Yāva-jīvam pi ca bālo paṇḍitaṃ payirupāsati,

一生涯 と雖も 又 愚者は 賢者に 奉じ仕ふ

na so dhammaṃ vijānāti, dabbī sūpa-rasaṃ yathā.

否 其は  法を  了知す  匙が 汁の味を の如くに

(愚者はたとひ一生涯賢者に奉じ仕ふとも、そは法を了知すること無し。匙が汁の味を知ること無きが如く。)

愚かな者は生涯賢者につかえても、真理を知ることが無い。匙が汁の味を知ることができないように。

 yāva-jīvam: =yāva-jīvaṃ*1

  yāva-jīvaṃ: adv. [yāva-jīva の acc.]*2 寿命(が終る)まで, 一生涯

   yāva: adv. prep. [ya*3-va] ~までは, ~の限りは, ~の間は

    ya: pron. rel. 所のもの

    -va: 時間・理由の副詞を形成する*4

   jīva: n. [jīv-a] 生命, 命, 霊魂

    √jīv(a): 生きる

    -a: 名詞・形容詞を形成する*5

 pi ca: =api ca  更にまた

  pi: =api  adv. conj. も, 亦, いえども, けれども, たとい~でも

  ca: conj. と, そして, また

 bālo: bāla の nom. sg.

  bāla: a. 愚なる, 愚痴の, 無知の; 若き, 新しき

 paṇḍitaṃ: paṇḍita の acc. sg.

  paṇḍita: a. 賢き, 博学の, 賢智の. 賢者, 智者

 payirupāsati: [pari-upāsati*6] 尊敬す, 承事す, 敬奉す; 訪ねる

  pari-: pref. 円, 遍ねく, 完全に, 強意. 完全性などを意味する*7

  upāsati: [upa-ās*8] 近坐す, 仕える, 尊敬す, 近づく

   upa-: pref. ~に, ~に向かって, 近くに, ~と一緒に, ~のそばで, ~のように,  ~まで, (apa と逆に)下に, 少なく*9

   √ās(a): 坐す, 座

 na: adv. なし

 so: ta の nom. sg. m.*10 それは, 彼は

 dhammaṃ: dhamma の acc. sg.

  dhamma: [dhar-ma]*11 m. n. 法, 教法, 真理, 正義

   √dhar(a):  [Sk. dhṛ] 持す

   -ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*12

 vijānāti: [vi-jānāti] 了知す, 了別す, 識知す

  vi-: 語根の意味を強調する*13

  jānāti: [√jñā, jā, ñā] 知る*14

 dabbī: f. さじ, 杓子  nom. sg.

 sūpa-rasaṃ: sūpa-rasa の acc. sg.

  sūpa-rasa: スープの味

   sūpa: m. n. スープ, 汁, 肉汁

   rasa: m. 味, 食味, 汁, 液; 作用, 実質

 yathā: adv. [ya-thā] ~の如くに, ~の如し

  ya: pron. rel. 所のもの

  -thā: 副詞を形成する*15

 

65.
Muhuttam api ce viññū paṇḍitaṃ payirupāsati,

寸時 と雖も もし 智者は 賢者に 奉じ仕ふ

khippaṃ dhammaṃ vijānāti, jivhā sūparasaṃ yathā.

直ちに   法を   了知す  舌が 汁の味を の如くに

(智者はたとひ寸時と雖も賢者に奉じ仕ふれば、直ちに法を了知す。舌が汁の味を知るが如く。)

聡明な人は瞬時(またたき)のあいだ賢者につかえても、ただちに真理を知る。──舌が汁の味をただちに知るように。

 muhuttam: adv. [muhutta の acc.]*16 須臾に, しばらく, 暫時

  muhutta: m. n. 須臾, 寸時, 寸刻

 api ce: たとえ~でも

  ce: conj. もし, 若し

 viññū: a. m. 有知, 有智; 識者, 智者  nom. sg.

 khippaṃ: adv. [khippa の acc.]*17 急速に

  khippa: a. n. [khip*18-a] 急速なる; 投網

   √khip(a): [Sk. kṣip] 投げる, 打つ

 jivhā: f. 舌