64.
Yāva-jīvam pi ca bālo paṇḍitaṃ payirupāsati,
一生涯 と雖も 又 愚者は 賢者に 奉じ仕ふ
na so dhammaṃ vijānāti, dabbī sūpa-rasaṃ yathā.
否 其は 法を 了知す 匙が 汁の味を の如くに
(愚者はたとひ一生涯賢者に奉じ仕ふとも、そは法を了知すること無し。匙が汁の味を知ること無きが如く。)
愚かな者は生涯賢者につかえても、真理を知ることが無い。匙が汁の味を知ることができないように。
yāva-jīvam: =yāva-jīvaṃ*1
yāva-jīvaṃ: adv. [yāva-jīva の acc.]*2 寿命(が終る)まで, 一生涯
yāva: adv. prep. [ya*3-va] ~までは, ~の限りは, ~の間は
ya: pron. rel. 所のもの
-va: 時間・理由の副詞を形成する*4
jīva: n. [jīv-a] 生命, 命, 霊魂
√jīv(a): 生きる
-a: 名詞・形容詞を形成する*5
pi ca: =api ca 更にまた
pi: =api adv. conj. も, 亦, いえども, けれども, たとい~でも
ca: conj. と, そして, また
bālo: bāla の nom. sg.
bāla: a. 愚なる, 愚痴の, 無知の; 若き, 新しき
paṇḍitaṃ: paṇḍita の acc. sg.
paṇḍita: a. 賢き, 博学の, 賢智の. 賢者, 智者
payirupāsati: [pari-upāsati*6] 尊敬す, 承事す, 敬奉す; 訪ねる
pari-: pref. 円, 遍ねく, 完全に, 強意. 完全性などを意味する*7
upāsati: [upa-ās*8] 近坐す, 仕える, 尊敬す, 近づく
upa-: pref. ~に, ~に向かって, 近くに, ~と一緒に, ~のそばで, ~のように, ~まで, (apa と逆に)下に, 少なく*9
√ās(a): 坐す, 座
na: adv. なし
so: ta の nom. sg. m.*10 それは, 彼は
dhammaṃ: dhamma の acc. sg.
dhamma: [dhar-ma]*11 m. n. 法, 教法, 真理, 正義
√dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*12
vijānāti: [vi-jānāti] 了知す, 了別す, 識知す
vi-: 語根の意味を強調する*13
jānāti: [√jñā, jā, ñā] 知る*14
dabbī: f. さじ, 杓子 nom. sg.
sūpa-rasaṃ: sūpa-rasa の acc. sg.
sūpa-rasa: スープの味
sūpa: m. n. スープ, 汁, 肉汁
rasa: m. 味, 食味, 汁, 液; 作用, 実質
yathā: adv. [ya-thā] ~の如くに, ~の如し
ya: pron. rel. 所のもの
-thā: 副詞を形成する*15
65.
Muhuttam api ce viññū paṇḍitaṃ payirupāsati,
寸時 と雖も もし 智者は 賢者に 奉じ仕ふ
khippaṃ dhammaṃ vijānāti, jivhā sūparasaṃ yathā.
直ちに 法を 了知す 舌が 汁の味を の如くに
(智者はたとひ寸時と雖も賢者に奉じ仕ふれば、直ちに法を了知す。舌が汁の味を知るが如く。)
聡明な人は瞬時(またたき)のあいだ賢者につかえても、ただちに真理を知る。──舌が汁の味をただちに知るように。
muhuttam: adv. [muhutta の acc.]*16 須臾に, しばらく, 暫時
muhutta: m. n. 須臾, 寸時, 寸刻
api ce: たとえ~でも
ce: conj. もし, 若し
viññū: a. m. 有知, 有智; 識者, 智者 nom. sg.
khippaṃ: adv. [khippa の acc.]*17 急速に
khippa: a. n. [khip*18-a] 急速なる; 投網
√khip(a): [Sk. kṣip] 投げる, 打つ
jivhā: f. 舌