蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

ダンマパダで学ぶパーリ語 27 (53. 54.)

53.

Yathā pi puppha-rāsimhā kāyirā mālā-guṇe bahū

如く また 花の集積から 作すべき 華鬘の類を 多くの

evaṃ jātena maccena kattabbaṃ kusalaṃ bahuṃ.

斯く 生ぜる 衆生によりて 為さるるべき 善き事が 多くの

(花の集積から多くの華鬘(けまん)の類ひを作(な)すべかる如く、斯くの如くに生じては死すべかる人によりて、多くの善きことが為さるるべきなり。)

うず高い花を集めて多くの華鬘(はなかざり)をつくるように、人として生まれまた死ぬべきであるならば、多くの善いことをなせ。

 yathā: adv. [ya-thā] ~の如くに, ~の如し

  ya: pron. rel. 所のもの

  -thā: 様子の副詞を形成する*1

 pi: adv. conj. も, 亦, いえども, けれども, たとい~でも

 puppha-rāsimhā: puppha-rāsi の abl. sg.

  puppha-rāsi: 花聚, 花の集積

   puppha: n. 花, 華; 月華, 月経

   rāsi: m. 聚, 集積, 類聚; 財富, 財聚

 kāyirā: karoti の opt. pl.*2

  karoti: [√kar(a), Sk. kṛ]*3 なす, 行う, 作る

 mālā-guṇe: mālā-guṇa の acc. pl.

  mālā-guṇa: 華鬘類

   mālā: f. 鬘, 華鬘, 花環

   guṇa: m. 重, 種, 種類

 bahū: bahu の acc. pl. n.*4

  bahu: a. 多くの, 多の

 evaṃ: adv. かく, かくの如く

 jātena: jāta の ins. sg. m.

  jāta: a. [janati の pp.]*5 生ぜる, 発生の, 生起の

   janati: [√jan(a)] 生ずる, 産む

 maccena: macca の ins. sg.

  macca: a. m. [marati の grd.] 死ぬベき; 人, 人間

   marati: [√mar(a), Sk. mṛ] 死す

 kattabbaṃ: kattabba の nom. sg. n.

  kattabba: =kātabba  a. n. [karoti の grd.]*6 なさるべき, 行うベき, 義務

 kusalaṃ: kusala の nom. sg. n.

  kusala: a. 善き, 善業; 巧みな, 善巧

 bahuṃ: bahu の nom. sg. n.*7

 

54.

Na puppha-gandho paṭivātam eti,

否   花の香は   風に逆らひ 行く 

na candanaṃ tagaraṃ mallikā vā,

否 栴檀の タガラの マツリカの 或は

sataṃ ca gandho paṭivātam eti, sabbā disā sappuriso pavāyati.

善人等の 又 香は 風に逆らひ 行く 全ての 方に 善人は 香る

(花の香は風に逆らひ行くこと無し。栴檀やタガラ、或はマツリカの香も。されど善き人々の香は風に逆らひ行く。すべての方に善人は香る。)

花の香は風に逆らっては進んで行かない。栴檀(せんだん)もタガラの花もジャスミンもみなそうである。しかし徳のある人々の香は、風に逆らっても進んで行く。徳のある人はすべての方向に薫る。

 na: adv. なし

 puppha-gandho: puppha-gandha の nom. sg.

  puppha-gandha: 花の香

   gandha: m. 香, 芳香, 薫香, 香料

 paṭivātam: adv. [paṭivāta の acc.]*8 逆風に, 風に逆らつて

  paṭivāta: m. [paṭi-vāta] 逆風

   paṭi-: pref. prep. 反対に, 戻して, 逆方向に, 戻って, 返して, 向かって, 近くに*9

   vāta: m. [vā-ta] 風, 身内風

    √: 行く, 吹く, 滅する, 香る

    -ta: 名詞を形成する*10

 eti: [√i] 行く, 来る, 達する, 経験する*11

 candanaṃ: candana の nom. sg.

  candana: m. n. 栴檀, せんだん

 tagaraṃ: tagara の nom. sg.

  tagara: n. 格香, 冷凌香, タガラ香

 mallikā: =mālikā  f. 末利迦, 次第花 [香木], ジャスミン  nom. sg.

 : adv. conj. または, 或は

 sataṃ: [sat の gen. pl.]*12 善き人々の

  sat: =sant  a. [atthi の ppr.]*13 ありつつ, 現存の; 善き, 正しき, 善人

   atthi: [√as]*14 ある, 存在する

 ca: conj. と, そして, また

 gandho: gandha の nom. sg.

 sabbā: sabba の acc. pl. f.*15

  sabba: a. n. 一切の, すべて, 一切のもの

 disā: f. [dis-ā] 方角, 方位, 四方, 方

  √dis(a): [Sk. diś] 方角

  : 女性名詞を形成する*16

 sappuriso: sappurisa の nom. sg.

  sappurisa: m. [sat-purisa*17] 善人, 善士, 正士

   purisa: m. 人, 男, 男子, 丈夫, 人間, 神我

 pavāyati: [pa-vāyati] 吹き放つ, 香りを放つ

  pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*18

  vāyati: [√vā]*19 吹く, 息を出す, 香る, 匂う