蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

ダンマパダで学ぶパーリ語 132. (294. 295.)

294.

Mātaraṃ pitaraṃ hantvā, rājāno dve ca khattiye,

母を    父を  害して 王達を 二の と 刹帝利を

raṭṭhaṃ sānucaraṃ hantvā, anīgho yāti brāhmaṇo.

王国を 従者と共なる 害して 無苦なる 去る 婆羅門は

(母と父と、二のクシャトリアの王たちを害し、従者と共なる王国を害して後、無苦となりて婆羅門は去る。)

(「妄愛」という) 母と (「われありという慢心」である) 父とをほろぼし、(永久に存在するという見解と滅びて無くなるという見解という) 二人の武家の王をほろぼし、(主観的機官と客観的対象とあわせて十二の領域である) 国土と (「喜び貪り」という)従臣とをほろぼして、バラモンは汚れなしにおもむく。

 mātaraṃ: mātar の acc. sg.*1

  mātar: f. 母

 pitaraṃ: pitar の acc. sg.*2

  pitar: m. 父, 父祖

 hantvā: hanati の ger.*3

  hanati: [√han(a)] 殺す, 害す, 破壊す, 打つ

 rājāno: rājan の acc. pl.*4

  rājan: m. 王, 国王

 dve: dvi の acc. pl. m.*5

  dvi: num. 二

 khattiye: khattiya の acc. pl.

  khattiya: m. クシャトリア, 剎帝利, 王族

 raṭṭhaṃ: raṭṭha の acc. sg.

  raṭṭha: n. 国, 王国

 sānucaraṃ: sānucara の acc. sg. n.

  sānucara: a. [sa-anucara*6] 従者と共なる

   sa: =saha  prep. 共に, 有する, 同じ

   anucara: m. [anu-car-a] 伴侶, 従者

    anu-: pref. 随いて, 次に, 順じて, 従って, 倶に

    √car(a): 行く, 行ず

    -a: 名詞・形容詞を形成する*7

 anīgho: anīgha の nom. sg. m.

  anīgha: =anigha  a. [a-nīgha] 動転なき, 無苦の, 安静の, 悶なき

   a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不

   nīgha: =nigha  m. n. 悩乱, 激情; 殺, 破壊

 yāti: [√yā] 行く

 brāhmaṇo: brāhmaṇa の nom. sg.

  brāhmaṇa: m. 婆羅門, 婆羅門族

 

295.

Mātaraṃ pitaraṃ hantvā, rājāno dve ca sotthiye,

母を    父を  害して 王達を 二の と 婆羅門を

veyyaggha-pañcamaṃ hantvā, anīgho yāti brāhmaṇo.

第五の虎を       害して 無苦なる 去る 婆羅門は

(母と父と、二のヴェーダを学びたる婆羅門王たちを害し、第五の虎を害して後、無苦となりて婆羅門は去る。)

(「妄愛」という) 母と (「われありという慢心」である) 父とをほろぼし、(永久に存在するという見解と滅びて無くなるという見解という) 二人の、学問を誇るバラモン王をほろぼし、第五には (「疑い」という) 虎をほろぼして、バラモンは汚れなしにおもむく。

 sotthiye: sotthiya の acc. pl.

  sotthiya: =sottiya  [Sk. śrotriya] 聞経者, 婆羅門

 veyyaggha-pañcamaṃ: veyyaggha-pañcama の acc. sg. m.

  veyyaggha: =veyyagghin  a. m. [<vyaggha] 虎の如き(疑惑), 虎皮を覆うた車

   vyaggha: =byaggha  m. 虎

  pañcama: =pañcamaka  a. [pañca-ma] 第五の

   pañca: num. a. 五

   -ma: 序数を形成する*8