294.
Mātaraṃ pitaraṃ hantvā, rājāno dve ca khattiye,
母を 父を 害して 王達を 二の と 刹帝利を
raṭṭhaṃ sānucaraṃ hantvā, anīgho yāti brāhmaṇo.
王国を 従者と共なる 害して 無苦なる 去る 婆羅門は
(母と父と、二のクシャトリアの王たちを害し、従者と共なる王国を害して後、無苦となりて婆羅門は去る。)
(「妄愛」という) 母と (「われありという慢心」である) 父とをほろぼし、(永久に存在するという見解と滅びて無くなるという見解という) 二人の武家の王をほろぼし、(主観的機官と客観的対象とあわせて十二の領域である) 国土と (「喜び貪り」という)従臣とをほろぼして、バラモンは汚れなしにおもむく。
mātaraṃ: mātar の acc. sg.*1
mātar: f. 母
pitaraṃ: pitar の acc. sg.*2
pitar: m. 父, 父祖
hantvā: hanati の ger.*3
hanati: [√han(a)] 殺す, 害す, 破壊す, 打つ
rājāno: rājan の acc. pl.*4
rājan: m. 王, 国王
dve: dvi の acc. pl. m.*5
dvi: num. 二
khattiye: khattiya の acc. pl.
khattiya: m. クシャトリア, 剎帝利, 王族
raṭṭhaṃ: raṭṭha の acc. sg.
raṭṭha: n. 国, 王国
sānucaraṃ: sānucara の acc. sg. n.
sānucara: a. [sa-anucara*6] 従者と共なる
sa: =saha prep. 共に, 有する, 同じ
anucara: m. [anu-car-a] 伴侶, 従者
anu-: pref. 随いて, 次に, 順じて, 従って, 倶に
√car(a): 行く, 行ず
-a: 名詞・形容詞を形成する*7
anīgho: anīgha の nom. sg. m.
anīgha: =anigha a. [a-nīgha] 動転なき, 無苦の, 安静の, 悶なき
a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不
nīgha: =nigha m. n. 悩乱, 激情; 殺, 破壊
yāti: [√yā] 行く
brāhmaṇo: brāhmaṇa の nom. sg.
brāhmaṇa: m. 婆羅門, 婆羅門族
295.
Mātaraṃ pitaraṃ hantvā, rājāno dve ca sotthiye,
母を 父を 害して 王達を 二の と 婆羅門を
veyyaggha-pañcamaṃ hantvā, anīgho yāti brāhmaṇo.
第五の虎を 害して 無苦なる 去る 婆羅門は
(母と父と、二のヴェーダを学びたる婆羅門王たちを害し、第五の虎を害して後、無苦となりて婆羅門は去る。)
(「妄愛」という) 母と (「われありという慢心」である) 父とをほろぼし、(永久に存在するという見解と滅びて無くなるという見解という) 二人の、学問を誇るバラモン王をほろぼし、第五には (「疑い」という) 虎をほろぼして、バラモンは汚れなしにおもむく。
sotthiye: sotthiya の acc. pl.
sotthiya: =sottiya [Sk. śrotriya] 聞経者, 婆羅門
veyyaggha-pañcamaṃ: veyyaggha-pañcama の acc. sg. m.
veyyaggha: =veyyagghin a. m. [<vyaggha] 虎の如き(疑惑), 虎皮を覆うた車
vyaggha: =byaggha m. 虎
pañcama: =pañcamaka a. [pañca-ma] 第五の
pañca: num. a. 五
-ma: 序数を形成する*8