288.
Na santi puttā tāṇāya, na pitā n'āpi bandhavā,
否 あり 子供等が 救護の為 否 父 否/と雖も 親族等
antaken'ādhipannassa n'atthi ñātīsu tāṇatā.
死により/捉えられたるに 否/あり 親族の内に 救護は
(助けらる子供らのあること無し。父や親族と雖も助けたること無し。死に捉えられたる者には親族の内にも助けたる者のあること無し。)
子も救うことができない。父も親戚もまた救うことができない。死に捉えられた者を、親族も救い得る能力がない。
na: adv. なし
santi: atthi の pl.*1
atthi: [√as(a)]*2 ある, 存在する
puttā: putta の nom. pl.
putta: m. 子, 子息; 男児
tāṇāya: tāṇa の dat. sg.*3
tāṇa: n. 救護所, 避難処, 救護, 庇護
pitā: pitar の nom. sg.*4
pitar: m. 父, 父祖
n'āpi: na + api*5
api: adv. conj. も, 亦, いえども, けれども, たとい~でも
bandhavā: bandhava の nom. pl.
bandhava: m. [bandhu*6-a] 親族, 親戚, 親類; 関係者
bandhu: m. [bandh-u] 親族, 親戚, 親類, 縁者
√bandh(a): 縛る
-u: 名詞・形容詞を形成する*7
-a: 名詞・形容詞を形成する*8
antaken'ādhipannassa: antakena + adhipannassa*9
antakena: antaka の ins. sg.
antaka: m. [anta-ka] 死神, 死魔, 悪魔
anta: m. 終極, 目的, 極限, 辺, 極端
-ka: 名詞・形容詞を形成する*10
adhipannassa: adhipanna の dat. sg. m.
adhipanna: a. [adhi-panna] 入りたる, 捉えられたる
adhi-: pref. 上に, ついて, 増上*11
panna: a. [√pajjati の pp.]*12 落ちたる, おろした, 倒した
pajjati: [√pad(a)]*13 歩く, 行く
n'atthi: na*14 + atthi
ñātīsu: ñāti の loc. pl.
ñāti: f. [ñā-ti] 親族, 親類, 親里
√ñā: 知る
-ti: 女性動作・動作主名詞を形成する*15
tāṇatā: f. [tāṇa-tā] 救護, 庇護 nom. sg.
tāṇa: n. 救護所, 避難処, 救護, 庇護
-tā: 女性抽象名詞を形成する*16
289.
Etamattha-vasaṃ ñatvā paṇḍito sīla-saṃvuto,
是を/道理を 知りて 賢者は 戒をまもれる
nibbāna-gamanaṃ maggaṃ khippameva visodhaye.
涅槃に到ることを 道を 速やかに/唯 清めしむべし
(戒をまもれる賢者はこの道理を知りて、涅槃に到る道をただ速やかに清めしむべし。)
心ある人はこの道理を知って、戒律をまもり、すみやかにニルヴァーナに至る途を清くせよ。
etamattha-vasaṃ: etaṃ*17 + attha-vasaṃ
etaṃ: eta の acc. sg. m.*18
eta: pron. a. これ, それ
attha-vasaṃ: attha-vasa の acc. sg.
attha-vasa: m. n. 道理, 義理, 義利, 義趣, 利益, 因由
attha: m. n. [atth-a] 義, 利益, 道理, 意味, 必要, 裁判
√atth(a): [Sk. arth] 目的, 願望, 欲望, 義, 手段, 意味, 物, 事, 利益, 乞求
-a: 名詞・形容詞を形成する*19
vasa: m. n. 自在, 力, 権力, 影響
paṇḍito: paṇḍita の nom. sg.
paṇḍita: a. 賢き, 博学の, 賢智の. 賢者, 智者
sīla-saṃvuto: sīla-saṃvuta の nom. sg. m.
sīla: n. [sīl-a] 戒, 戒行, 習慣, 道徳
√sīl(a): [Sk. śīl] 瞑想する, 熟慮する, 帰依する, 行ずる
saṃvuta: a. [saṃ-vu の pp.]*22 防護せる, 制御せる; 閉じたる, 結べる
saṃ-: pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に*23
√vu: [Sk. vṛ] 抑制する, まもる
nibbāna-gamanaṃ: nibbāna-gamana の acc. sg. m.
nibbāna: n. [ni-vā*24-na] 涅槃, 寂滅
ni-: 外に, 前へ, 下に, 中に, 下方に, 中で, 下で *25
√vā: 行く, 吹く, 香る
-na: 名詞を形成する*26
gamana: n. [gam-ana] 行くこと, 歩行, 旅行
√gam(u): 行く
-ana: 派生名詞・形容詞を形成する*27
maggaṃ: magga の acc. sg.
magga: m. [magg-a] 道, 道路, 正道
√magg(a): [Sk. mṛg] 探し求める, 追跡する
khippameva: khippaṃ*28 + eva
khippaṃ: adv. [khippa の acc.]*29 急速に
khippa: a. n. [khip*30-a] 急速なる; 投網
√khip(a): [Sk. kṣip] 投げる, 打つ, (腕や脚を)素早く動かす
eva: adv. が, こそ, のみ, だけ, 強意
visodhaye: visodhayati の opt.*31
visodhayati: =visodheti [visujjhati の caus.]*32 清める, 浄化す
visujjhati: [vi-sujjhati] 清まる, 清くなる
vi-: pref. ばらばらに, 離れて, ~なしに. 分離, 相違, 分散を意味する*33
sujjhati: [√sudh(a), Sk. śudh]*34 浄まる, 清まる