蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

ダンマパダで学ぶパーリ語 124 (277-279.)

277.

Sabbe saṅkhārā aniccā ti yadā paññāya passati,

一切の 行は 無常なる と 時に 般若を以て 見る

atha nibbindati dukkhe, esa maggo visuddhiyā.

時に  厭離す  苦を  これは 道  清浄の

(一切の行は無常なりと般若を以て見る時、その時苦を厭離す。これが清浄の道なり。)

「一切の形成されたものは無常である」(諸行無常)と明らかな智慧をもって観(み)るときに、ひとは苦しみから遠ざかり離れる。これこそ人が清らかになる道である。

 sabbe: sabba の nom. pl. m.*1

  sabba: a. n. 一切の, すべて, 一切のもの

 saṅkhārā: saṅkhāra の nom. pl.

  saṅkhāra: m. [saṃ*2-kar*3-a] 行, 為作(行為とその習慣カ), 形成カ, 現象

   saṃ-: pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に*4

   √kar(a): [Sk. kṛ] なす, 作す, 作る

   -a: 名詞・形容詞を形成する*5

 aniccā: anicca の nom. pl. m.

  anicca: a. [a-nicca] 無常の

   a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不

   nicca: a. 常の, 常住の

 ti: ind. [iti の略] と, かく

 yadā: adv. [ya-dā] ~の時に

  ya: pron. rel. 所のもの

  -dā: 時間を表す副詞を形成する*6

 paññāya: paññā の ins. sg.

  paññā: f. [pa-ñā]*7 般若, 慧, 智慧

   pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*8

   √ñā: =jñā, jā  知る

 passati: [√pas(a), Sk. paś]*9 見る; 見出す, 知る

 atha: ind. 時に, また

 nibbindati: [ni-vindati]*10 厭う, 厭離す

  ni-:  外に, 前へ, 下に, 中に, 下方に, 中で, 下で*11

  vindati: [√vid(a)]*12 知る; 見出す, 所有す

 dukkhe: dukkha の loc. sg.

  dukkha: a. n. [dukkh-a] 苦, 苦痛, 苦悩

   √dukkh(a): [Sk. duḥkha] 苦, 苦痛, 不快, 困難, 不安

 esa: =eso

  eso: eta の nom. sg. m.*13

   eta: pron. a. これ, それ

 visuddhiyā: visuddhi の gen. sg.*14

  visuddhi: f. [vi-suddhi] 清浄, 浄

   vi-: pref. ばらばらに, 離れて, ~なしに. 分離, 相違, 分散を意味する*15

   suddhi: f. [sudh-i] 清浄, 浄

    √sudh(a): 清浄

    -i: 名詞・形容詞を形成する*16

 

278.

Sabbe saṅkhārā dukkhā ti yadā paññāya passati,

一切の  行は   苦  と 時に 般若を以て 見る

atha nibbindati dukkhe, esa maggo visuddhiyā.

時に  厭離す  苦を  これは 道  清浄の

(一切の行は苦なりと般若を以て見る時、その時苦を厭離す。これが清浄の道なり。)

「一切の形成されたものは苦しみである」(一切皆苦)と明らかな智慧をもって観(み)るときに、ひとは苦しみから遠ざかり離れる。これこそ人が清らかになる道である。

 dukkhā: dukkha の nom. pl. m.

 

279.

Sabbe dhammā anattā ti yadā paññāya passati,

一切の  法は  非我 と 時に 般若を以て 見る

atha nibbindati dukkhe, esa maggo visuddhiyā.

時に  厭離す  苦を  これは 道  清浄の

(一切の法は我ならざりと般若を以て見る時、その時苦を厭離す。これが清浄の道なり。)

「一切の事物は我ならざる」(諸法非我)と明らかな智慧をもって観(み)るときに、ひとは苦しみから遠ざかり離れる。これこそ人が清らかになる道である。

 dhammā: dhamma の nom. pl.

  dhamma: [dhar-ma]*17 m. n. 法, 教法, 真理, 正義

   √dhar(a): [Sk. dhṛ] 保つ, 支える

   -ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*18