Sukha-vagga 楽しみ (楽の章)
sukha: a. n. [sukh-a] 楽, 安楽, 幸福
√sukh(a): 幸福にする, 喜ばせる
-a: 名形容詞を形成する*1
vagga: m. 群, 品, 章
197.
Susukhaṃ vata jīvāma verinesu averino,
大ひに楽しく 実に 生く 怨めるに於て 怨み無きは
verinesu manussesu viharāma averino.
怨みある 者等の間に於て 住す 怨み無きは
(怨みある者らの間に於て、怨み無き我らは実に大ひに楽しく生く。怨みある者らの間に於て、怨み無き我らは住す。)
怨みをいだいている人々のあいだにあって怨むこと無く、われらは大いに楽しく生きよう。怨みをもっている人々のあいだにあって怨むこと無く、われらは暮していこう。
susukhaṃ: adv. [susukha の acc.]*2 大いに楽しく
susukha: su- + sukha
su-: pref. よき, 善き, 良き, 妙(たえ)なる, 易き, 極めて
vata: adv. 実に
jīvāma: jīvati の 1pl.*3
jīvati: [√jīv(a)] 生きる, 生存する
verinesu: verin の loc. pl. m.*4
verin: =verika a. [vera-in]*5 怨ある, 敵意の, 怨敵
vera: n. 怨, 怨心, 怨恨, 敵意, うらみ
-in: 所有形容詞を形成する*6
averino: averin の nom. pl. m.*7
averin: a. [avera-in] 無怨の
avera: a. [a-vera] 怨みなき, 恚心なき
a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不
manussesu: manussa の loc. pl.
manussa: m. 人, 人間
viharāma: viharati の 1pl.*8
viharati: [vi-har] 住す, 居住す
vi-: 語根の意味を強調する*9
√har(a): [Sk. hṛ] ある, 存在す
198.
Susukhaṃ vata jīvāma āturesu anāturā,
大ひに楽しく 実に 生く 悩めるに於て 悩み無きは
āturesu manussesu viharāma anāturā.
悩める 者等の間に於て 住す 悩み無きは
(悩める者らの間に於て、悩み無き我らは実に大ひに楽しく生く。悩める者らの間に於て、悩み無き我らは住す。)
悩める人々のあいだにあって、悩み無く、大いに楽しく生きよう。悩める人々のあいだにあって、悩み無く暮そう。
āturesu: ātura の loc. pl. m.
ātura: a. 苦悩せる, 病める
anāturā: a. anātura の nom. pl. m.
anātura: an + ātura
an-: =a- pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では anとなる
199.
Susukhaṃ vata jīvāma ussukesu anussukā,
大ひに楽しく 実に 生く 貪欲なるに於て 貪欲ならざるは
ussukesu manussesu viharāma anussukā.
貪欲なる 者等の間に於て 住す 貪欲ならざるは
(貪欲なる者らの間に於て、貪欲ならざる我らは実に大ひに楽しく生く。貪欲なる者らの間に於て、貪欲ならざる我らは住す。)
貪(むさぼ)っている人々のあいだにあって、患(わずら)いなく、大いに楽しく生きよう。貪っている人々のあいだにあって、貪らないで暮そう。
ussukesu: ussuka の loc. pl. m.
ussuka: a. 熱心になる, 貪欲なる
anussukā: anussuka の nom. pl. m.
anussuka: an + ussuka