蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

ダンマパダで学ぶパーリ語 91 (197-199.)

Sukha-vagga 楽しみ (楽の章)

 sukha: a. n. [sukh-a] 楽, 安楽, 幸福

  √sukh(a): 幸福にする, 喜ばせる

  -a: 名形容詞を形成する*1

 vagga: m. 群, 品, 章

 

197.

Susukhaṃ vata jīvāma verinesu averino,

大ひに楽しく 実に 生く 怨めるに於て 怨み無きは

verinesu manussesu viharāma averino.

怨みある 者等の間に於て 住す 怨み無きは

(怨みある者らの間に於て、怨み無き我らは実に大ひに楽しく生く。怨みある者らの間に於て、怨み無き我らは住す。)

怨みをいだいている人々のあいだにあって怨むこと無く、われらは大いに楽しく生きよう。怨みをもっている人々のあいだにあって怨むこと無く、われらは暮していこう。

 susukhaṃ: adv. [susukha の acc.]*2 大いに楽しく

  susukha: su- + sukha

   su-: pref. よき, 善き, 良き, 妙(たえ)なる, 易き, 極めて

 vata: adv. 実に

 jīvāma: jīvati の 1pl.*3

  jīvati: [√jīv(a)] 生きる, 生存する

 verinesu: verin の loc. pl. m.*4

  verin: =verika  a. [vera-in]*5 怨ある, 敵意の, 怨敵

   vera: n. 怨, 怨心, 怨恨, 敵意, うらみ

   -in: 所有形容詞を形成する*6

 averino: averin の nom. pl. m.*7

  averin: a. [avera-in] 無怨の

   avera: a. [a-vera] 怨みなき, 恚心なき

    a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不

 manussesu: manussa の loc. pl.

  manussa: m. 人, 人間

 viharāma: viharati の 1pl.*8

  viharati: [vi-har] 住す, 居住す

   vi-: 語根の意味を強調する*9

   √har(a): [Sk. hṛ] ある, 存在す

 

198.

Susukhaṃ vata jīvāma āturesu anāturā,

大ひに楽しく 実に 生く 悩めるに於て 悩み無きは

āturesu manussesu viharāma anāturā.

悩める 者等の間に於て 住す 悩み無きは

(悩める者らの間に於て、悩み無き我らは実に大ひに楽しく生く。悩める者らの間に於て、悩み無き我らは住す。)

悩める人々のあいだにあって、悩み無く、大いに楽しく生きよう。悩める人々のあいだにあって、悩み無く暮そう。

 āturesu: ātura の loc. pl. m.

  ātura: a. 苦悩せる, 病める

 anāturā: a. anātura の nom. pl. m.

  anātura: an + ātura

   an-: =a-  pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では anとなる

 

199.

Susukhaṃ vata jīvāma ussukesu anussukā,

大ひに楽しく 実に 生く 貪欲なるに於て 貪欲ならざるは

ussukesu manussesu viharāma anussukā.

貪欲なる 者等の間に於て 住す 貪欲ならざるは

(貪欲なる者らの間に於て、貪欲ならざる我らは実に大ひに楽しく生く。貪欲なる者らの間に於て、貪欲ならざる我らは住す。)

(むさぼ)っている人々のあいだにあって、患(わずら)いなく、大いに楽しく生きよう。貪っている人々のあいだにあって、貪らないで暮そう。

 ussukesu: ussuka の loc. pl. m.

  ussuka: a. 熱心になる, 貪欲なる

 anussukā: anussuka の nom. pl. m.

  anussuka: an + ussuka