82.
Yathā pi rahado gambhīro vippasanno anāvilo,
如く 又 湖が 深き 明浄なる 清き
evaṃ dhammāni sutvāna vippasīdanti paṇḍitā.
斯くの如く 法を 聴きて 清くある 賢者等は
(深き湖が明浄にして清くあるが如く、斯くの如くに賢者等は法を聴きて清くあり。)
深い湖が、澄んで、清らかであるように、賢者は真理を聞いて、こころ清らかである。
yathā: adv. [ya-thā] ~の如くに, ~の如し
ya: pron. rel. 所のもの
-thā: 様子の副詞を形成する*1
pi: =api indecl. 亦, も亦, 恐らく, 雖も
rahado: rahada の nom. sg.
rahada: m. 池, 湖, 沼
gambhīro: gambhīra の nom. sg. m.
gambhīra: a. 深き, 甚深の
vippasanno: vippasanna の nom. sg. m.
vippasanna: a. [vippasīdati の pp.]*2 明浄なる, 清浄の
vippasīdati: [vi-pasīdati*3] 大いに喜ぶ, 明朗である, 清くある
vi-: 強意*4
pasīdati: 浄まる, 喜ぶ, 信ずる
anāvilo: anāvila の nom. sg. m.
anāvila: a. [an-āvila] 濁りなき, 清き
an-: = -a pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では an- となる
āvila: a. 混濁の, 濁った, 汚い
evaṃ: adv. かく, かくの如く
dhammāni: dhamma の acc. pl. n.
dhamma: [dhar-ma]*5 m. n. 法, 教法, 真理, 正義
√dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*6
sutvāna: suṇāti の ger.*7
suṇāti: [√su, Sk. śru]*8 聞く, 聴く
vippasīdanti: vippasīdati の pl.
paṇḍitā: paṇḍita の nom. pl.
paṇḍita: a. 賢き, 博学の, 賢智の. 賢者, 智者
83.
Sabbattha ve sappurisā cajanti, na kāma-kāmā lapayanti santo,
一切処に 実に 善人等は 捨つ 無し 欲楽により 喋る ある
sukhena phuṭṭhā atha vā dukkhena,
安楽により 触れられたる 又 或は 苦によりて
na ucc'āvacaṃ paṇḍitā dassayanti.
無し 高低を 賢者等は 見す
(実に一切処に善人等は束縛無く、欲楽によりて喋ること無く、触れられたる安楽によりて、また或ひは苦によりて、高ぶりも消沈も見すこと無し。)
高尚な人々は、どこにいても、執着することが無い。快楽を欲してしゃべることが無い。楽しいことに遭っても、苦しいことに遭っても、賢者は動ずる色がない。
sabbattha: adv. [sabba-tha*9] 一切処に
sabba: a. n. 一切の, すべて, 一切のもの
-tha: 場所を表す副詞を形成する*10
ve: adv. 実に
sappurisā: sappurisa の nom. pl.
sappurisa: m. [sat-purisa*11] 善人, 善士, 正士
sat: =sant a. [atthi の ppr.]*12 ありつつ, 存在の; 善なる
purisa: m. 人, 男, 男子, 丈夫, 人間, 神我
cajanti: cajati の pl.
cajati: [√caj(a), Sk. tyaj] 捨てる,棄つ
na: adv. なし
kāma-kāmā: kāma-kāma の abl. sg. m.*13
kāma: m. n. [kam*14-a] 欲, 愛欲, 欲念, 欲情, 欲楽
√kam(u): 欲っす, 楽しむ
-a: 名詞・形容詞を形成する*15
lapayanti: lapayati の pl.
lapayati: lapati の caus.*16
lapati: [√lap(a)] 話す, つぶやく, しゃべる
santo: sant の nom. pl. m.
sant: a. [atthi の ppr.]*17 存在する, ありつつ; 善なる
atthi: [√as(a)]*18 ある, 存在する
sukhena: sukha の ins. sg.
sukha: a. n. [sukh-a] 楽, 安楽, 幸福
√sukh(a): 幸福にする, 喜ばせる
phuṭṭhā: phuṭṭha の nom. pl. m.
phuṭṭha: a. [phusati の pp.]*19 触れたる, 接触した, 触違(体得)した
phusati: [√phus(a), Sk. spṛś] 触る, 接触す, 蝕達(体得)す
atha: ind. 時に, また
vā: adv. conj. または, 或は
dukkhena: dukkha の ins. sg.
dukkha: a. n. [dukkh-a] 苦, 苦痛, 苦悩
√dukkh(a): [Sk. duḥkha] 苦, 苦痛, 不快, 困難, 不安
ucc'āvacaṃ: ucc'āvaca の acc. sg. m.
ucc'āvaca: ucca-avaca*20 高低の
ucca: a. 上の, 高き
avaca: a. 低い
dassayanti: dassayati の pl.
dassayati: dassati の caus.*21 見せる, 示す
dassati: [√das(i), Sk. dṛś]*22 見る, 認める, 理解す