蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

ダンマパダで学ぶパーリ語 40 (82. 83.)

82.
Yathā pi rahado gambhīro vippasanno anāvilo,

如く 又  湖が  深き   明浄なる   清き

evaṃ dhammāni sutvāna vippasīdanti paṇḍitā.

斯くの如く 法を 聴きて  清くある  賢者等は

(深き湖が明浄にして清くあるが如く、斯くの如くに賢者等は法を聴きて清くあり。)

深い湖が、澄んで、清らかであるように、賢者は真理を聞いて、こころ清らかである。

 yathā: adv. [ya-thā] ~の如くに, ~の如し

  ya: pron. rel. 所のもの

  -thā: 様子の副詞を形成する*1

 pi: =api  indecl. 亦, も亦, 恐らく, 雖も

 rahado: rahada の nom. sg.

  rahada: m. 池, 湖, 沼

 gambhīro: gambhīra の nom. sg. m.

  gambhīra: a. 深き, 甚深の

 vippasanno: vippasanna の nom. sg. m.

  vippasanna: a. [vippasīdati の pp.]*2 明浄なる, 清浄の

   vippasīdati: [vi-pasīdati*3] 大いに喜ぶ, 明朗である, 清くある

    vi-: 強意*4

    pasīdati: 浄まる, 喜ぶ, 信ずる

 anāvilo: anāvila の nom. sg. m.

  anāvila: a. [an-āvila] 濁りなき, 清き

   an-: = -a  pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では an- となる

   āvila: a. 混濁の, 濁った, 汚い

 evaṃ: adv. かく, かくの如く

 dhammāni: dhamma の acc. pl. n.

  dhamma: [dhar-ma]*5 m. n. 法, 教法, 真理, 正義

   √dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す

   -ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*6

 sutvāna: suṇāti の ger.*7

  suṇāti: [√su, Sk. śru]*8 聞く, 聴く

 vippasīdanti: vippasīdati の pl.

 paṇḍitā: paṇḍita の nom. pl.

  paṇḍita: a. 賢き, 博学の, 賢智の. 賢者, 智者

 

83.
Sabbattha ve sappurisā cajanti, na kāma-kāmā lapayanti santo,

一切処に 実に 善人等は 捨つ  無し 欲楽により  喋る  ある

sukhena phuṭṭhā atha vā dukkhena,

安楽により 触れられたる 又 或は 苦によりて

na ucc'āvacaṃ paṇḍitā dassayanti.

無し 高低を  賢者等は  見す

(実に一切処に善人等は束縛無く、欲楽によりて喋ること無く、触れられたる安楽によりて、また或ひは苦によりて、高ぶりも消沈も見すこと無し。)

高尚な人々は、どこにいても、執着することが無い。快楽を欲してしゃべることが無い。楽しいことに遭っても、苦しいことに遭っても、賢者は動ずる色がない。

 sabbattha: adv. [sabba-tha*9] 一切処に

  sabba: a. n. 一切の, すべて, 一切のもの

  -tha: 場所を表す副詞を形成する*10

 ve: adv. 実に

 sappurisā: sappurisa の nom. pl.

  sappurisa: m. [sat-purisa*11] 善人, 善士, 正士

   sat: =sant  a. [atthi の ppr.]*12 ありつつ, 存在の; 善なる

   purisa: m. 人, 男, 男子, 丈夫, 人間, 神我 

 cajanti: cajati の pl.

  cajati: [√caj(a), Sk. tyaj] 捨てる,棄つ

 na: adv. なし

 kāma-kāmā: kāma-kāma の abl. sg. m.*13

  kāma: m. n. [kam*14-a] 欲, 愛欲, 欲念, 欲情, 欲楽

   √kam(u): 欲っす, 楽しむ

   -a: 名詞・形容詞を形成する*15

 lapayanti: lapayati の pl.

  lapayati: lapati の caus.*16

   lapati: [√lap(a)] 話す, つぶやく, しゃべる

 santo: sant の nom. pl. m.

  sant: a. [atthi の ppr.]*17 存在する, ありつつ; 善なる

   atthi: [√as(a)]*18 ある, 存在する

 sukhena: sukha の ins. sg.

  sukha: a. n. [sukh-a] 楽, 安楽, 幸福

   √sukh(a): 幸福にする, 喜ばせる

 phuṭṭhā: phuṭṭha の nom. pl. m.

  phuṭṭha: a. [phusati の pp.]*19 触れたる, 接触した, 触違(体得)した

   phusati: [√phus(a), Sk. spṛś] 触る, 接触す, 蝕達(体得)す

 atha: ind. 時に, また

 : adv. conj. または, 或は

 dukkhena: dukkha の ins. sg.

  dukkha: a. n. [dukkh-a] 苦, 苦痛, 苦悩

   √dukkh(a): [Sk. duḥkha] 苦, 苦痛, 不快, 困難, 不安

 ucc'āvacaṃ: ucc'āvaca の acc. sg. m.

  ucc'āvaca: ucca-avaca*20 高低の

   ucca: a. 上の, 高き

   avaca: a. 低い

 dassayanti: dassayati の pl.

  dassayati: dassati の caus.*21  見せる, 示す

   dassati: [√das(i), Sk. dṛś]*22 見る, 認める, 理解す