178.
Sudiṭṭhaṃ vata no ajja suppabhātaṃ suhuṭṭhitaṃ,
よく見られたる 実に 我等に 今日 よく輝ける よく奮起せる
yaṃ addasāma sambuddhaṃ ogha-tiṇṇamanāsavaṃ.
所の 見ゑけり 正覚者に 暴流を越えたる/無漏なる
(実に今日、よく輝きよく奮起せる者は我らによりよく見られたり。暴流を越え無漏なる正覚者に我らは見(まみ)ゑけり。)
今日われらは美しい〔太陽〕を見、美しく晴れた朝に逢い、気もちよく起き上がった。激流をのり超え、煩悩の汚れのなくなった〈覚った人〉にわれらは見えたからである。
sudiṭṭhaṃ: sudiṭṭha の nom. sg. n.
sudiṭṭha: a. [su-diṭṭha] 善く見られた
su-: pref. よき, 善き, 良き, 妙(たえ)なる, 易き, 極めて
diṭṭha: a. [dissati の pp.]*1 見られたる, 見, 所見
dissati: [√dis(a)]*2 見える, 見られる
vata: adv. 実に
no: ahaṃ の instr. pl.*3
ahaṃ: pron. 私は, 私が
ajja: adv. 今日, 現在
suppabhātaṃ: suppabhāta の nom. sg. n.
suppabhāta: a. [su-pabhāta*4] よく夜が明けた, 全く明るくなった
pabhāta: a. n. [pabhāti の pp.]*5 かがやける, 暁天の; 暁天, 早朝
pabhāti: [pa-bhāti] かがやく, 光る, 照る
bhāti: [√bhā] 輝く, 現われる
suhuṭṭhitaṃ: suhuṭṭhita の nom. sg. n.
suhuṭṭhita: a. [su-uṭṭhita*6] よく現起せる, よく起き上れる
uṭṭhita: a. [uṭṭhahati の pp. ]*7 起立せる, 奮起せる
uṭṭhahati: =uṭṭhāti, uttiṭṭhati [ud-thā*8]*9 起き上る, 奮起す
ud-: pref. 上方に, 上に, 昇って, 前へ*10
√ṭhā: [Sk. ṣṭhā] 立つ, 立ち止まる, 存在する, ある状態でいる
yaṃ: ya の acc. sg. m.*11
ya: pron. rel. 所のもの
addasāma: dassati の aor. 1pl.*12
dassati: [√das(i), Sk. dṛś]*13 見る, 認める, 理解す
sambuddhaṃ: sambuddha の acc. sg. m.
sambuddha: a. m. [sambujjhati の pp.]*14 よく覚れる, 正覚者, 等覚者
sambujjhati: [saṃ*15-bujjhati] よく覚る, 正覚す
saṃ-: =sam- pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に. 強意*16
bujjhati: =bodhati [√budh(a)]*17 覚る, 目覚む
ogha-tiṇṇamanāsavaṃ: ogha-tiṇṇaṃ*18 + anāsavaṃ
ogha-tiṇṇaṃ: ogha-tiṇṇa の acc. sg. m.
ogha-tiṇṇa: 暴流を越えたる, 暴流を渡れる
ogha: m. 暴流, 流, 洪水
tiṇṇa: a. [tarati の pp.]*19 渡れる, 度脱せる, 超えたる
tarati: [√tar(a), Sk. tṛ] 渡る, 度脱す, こえる, 横切る
anāsavaṃ: anāsava の acc. sg. m.
anāsava: a. [an-āsava] 漏なき, 無漏の
an-: =a- pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では an となる
āsava: m. [ā-su-a*20] 漏, 流漏, 煩悩, 酒
ā-: pref. へ, で, に向かって, の近くに, までに, の限り, から離れて, じゅうに*21
√su: [Sk. sru] 流れる, 流れ出る
-a: 名詞・形容詞を形成する*22
179.
Ime dasa-satā yakkhā iddhimanto yasassino
是等 千の 神霊共は 神通力ある 誉れある
sabbe taṃ saraṇaṃ yanti, tvaṃ no satthā anuttaro.
皆 其の 帰依に 至る 君は 我等の 師 無上の
(神通力あり誉れあるこれら千の神霊どもは、皆その帰依に至る。君は我らの無上の師なり。)
これらの千の神霊どもは、神通力あり、誉れたかきものどもであるが、かれらはすべてあなたに帰依します。あなたはわれらの無上の師であります。
ime: ayaṃ の nom. pl.*23
ayaṃ: pron. これ, この
dasa-satā: dasa-sata の nom. pl.
dasa-sata: 十百 = 一千
dasa: num. 十
sata: num. n. a. 百, 多くの
yakkhā: yakkha の nom. pl.
yakkha: m. 夜叉, 薬叉, 鬼神; 人
iddhimanto: iddhimant の nom. sg.
iddhimant: a. [iddhi-mant] 神変を有せる
iddhi: f. 神通, 神変
-mant: =mat 所有形容詞を形成する*24
yasassino: yasassin の nom. pl. m.*25
yasassin: a. [yasas-in] 有名な, 名声ある
yasas: n. 名称, 称誉, 名声
-in: 所有形容詞を形成する*26
sabbe: sabba の nom. pl. m.*27
sabba: a. n. 一切の, すべて, 一切のもの
taṃ: ta の acc. sg. m.*28
ta: pron. それ
saraṇaṃ: saraṇa の acc. sg.
saraṇa: n. [sar-ana] 帰依, 帰依所, 隠家
√sar(a): [Sk. smṛ] 喜ばせる, まもる, 生きる
-ana: 名詞・形容詞を形成する*29
yanti: yāti の pl.
yāti: [√yā] 行く, 至る
tvaṃ: 汝, 君 nom. sg.
no: ahaṃ の gen. pl.*30
satthā: satthar の nom. sg.*31
satthar: m. [sās-tar*32] 師, 大師, 教師, 教主
√sās(a): [Sk. śās] 教諭, 教導
-tar: 動作主名詞を形成する*33
anuttaro: anuttara の nom. sg. m.
anuttara: a. [an-uttara] 無上の, より上がない, 最高の, 無上士
an-: =a- pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では an となる
uttara: a. [udの比較級]*34 より上の, よりすぐれた, 北の, 北方の, 次の
180.
Te mayaṃ vicarissāma gāmā gāmaṃ nagā nagaṃ
其の 我等は 歩む 村から 村へ 山から 山へ
namassamānā sambuddhaṃ dhammassa ca sudhammatan" ti.
礼拝しつつ 正覚者を 法の 又 妙法性を と
(その我らは村から村へ、山から山へめぐり歩むなり。正覚者を、また法の妙なる所以を礼拝しつつ」)
われらは、村から村へ、山から山へ、めぐり歩もう、──覚った人をも、真理のすぐれた所以をも礼拝しつつ。」
te: ta の nom. pl. m.*35
mayaṃ: =vayaṃ ahaṃ の nom. pl.*36
vicarissāma: vicarati の fut. 1pl.*37
vicarati: [vi-carati] 伺察す, 遊歩す
vi-: pref. ばらばらに, 離れて, ~なしに. 分離, 相違, 分散を意味する. 強意*38
carati: [√car(a)] 行く, 行ず, 歩く
gāmā: gāma の abl. sg.
gāma: m. 村, 村落
gāmaṃ: gāma の acc. sg.
nagā: naga の abl. sg.
naga: m. [na-ga] 山
na: adv. なし
-ga: [<gam] 主に形容詞を形成する*39
√gam(u): 行く, 動く, 近づく, 達する
nagaṃ: naga の acc. sg.
namassamānā: namassati の ppr. nom. 1pl. m.*40
namassati: [namas の denom.]*41 礼拝す, 拝む
namas: n. [nam-as] 南無, 礼拝, 頂礼
√nam(u): 礼拝する, 辞儀する, 曲げる, 屈する
-as: 名詞を形成する*42
dhammassa: dhamma の gen. sg.
dhamma: [dhar*43-ma] m. n. 法, 教法, 真理, 正義
√dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*44
ca: conj. と, そして, また
sudhammatan: =sudhammataṃ*45
sudhammataṃ: sudhammatā の acc. sg.
sudhammatā: f. [su-dhamma*46-tā] 善法性, 妙法たること
-tā: 女性抽象名詞を形成する*47
ti: ind. [iti の略] と, かく