蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

ダンマパダで学ぶパーリ語 50 (106. 107.)

106.

Māse māse sahassena yo yajetha sataṃ samaṃ,

月に 月に 千度  所の者 祭らむ 百の間 等しく

ekaṃ ca bhāvit'attānaṃ muhuttam api pūjaye,

一の 又 自己の修されたる者を 一瞬 と雖も 供養せば

sā yeva pūjanā seyyo yaṃ ca vassa-sataṃ hutaṃ.

その 正に 供養が 優れたる 所の物 又  百年の  供物に

(月々千度、百年等しく祭らむ者が、然(しか)して一人の自己を修したる者を一瞬たりとも供養せば、而(しか)れば正にその供養は百年の供物(くもつ)よりすぐれたるなり。)

百年のあいだ、月々千回ずつ祭祀(まつり)を営む人がいて、またその人が自己を修養した人を一瞬間でも供養するならば、その供養することのほうが、百年祭祀を営むよりもすぐれている。

 māse: māsa の loc. sg.

  māsa: =masa  m. 暦月, 月 [インドでは暦月は三月頃から始まる]

 sahassena: adv. [sahassa の ins.]*1 千度

  sahassa: num. n. 千; 千金, 千両

 yo: ya の nom. sg. m.

  ya: pron. rel. 所のもの

 yajetha: yajati の opt. mid. sg.*2

  yajati: [√yaj(a)] まつる, 供養する, 犠牲とす

 sataṃ: adv. [sata の acc.]*3 百の間

  sata: num. n. a. 百, 多くの

 samaṃ: adv. [sama の acc. sg.] 等しく*4

  sama: a. 同じ, 同ーの, 平等の, 正しき, まさしき

 ekaṃ: eka の acc. sg. m.

  eka: a. num. 一, 一つ, 或る

 ca: conj. と, そして, また

 bhāvit’attānaṃ: bhāvit’attan の acc. sg. m.*5

  bhāvit’attan: bhāvita*6 + attan

   bhāvita: a. [bhāveti の pp.] 修せられたる, 所修習

    bhāveti: [bhavati の caus.]*7 あらしむ, 修習す, 修す

     bhavati: [√bhū]*8 ある, 存在する

   attan: m. [Sk. ātman] 我, 自己, 我体

 muhuttam: adv. [muhutta の acc.]*9 須臾に, しばらく, 暫時

  muhutta: m. n. 須臾, 寸時, 寸刻

 api: adv. conj. も, 亦, いえども, けれども, たとい~でも

 pūjaye: pūjeti の opt.*10

  pūjeti: [√pūj(a)]*11 供養す, 尊敬す, 崇拝す

 : ta の nom. sg. f.*12

 yeva: =eva  adv. が, こそ, のみ, だけ

 pūjanā: f. [pūj-ana*13-ā] 供養, 尊敬  nom. sg.

  √pūj(a): 供養する

  -ana: 名詞・形容詞を形成する*14

  : 女性名詞を形成する*15

 seyyo: seyya の nom. sg. m.

  seyya: a. よりよき, よりすぐれた

 yaṃ: ya の acc. sg. n.*16

  ya: pron. rel. 所のもの

 vassa-sataṃ: vassa-sata の nom. sg.

  vassa-sata: 百年

   vassa: m. n. 雨. 雨期, 雨期安居, 安居; 年; 活気, 精力, 男の精

 hutaṃ: huta の acc. sg.

  huta: a. n. [juhati の pp.]*17 供養せる, 献供の, 供物

   juhati: [√hu]*18 献供す, 供養す

 

107.

Yo ca vassa-sataṃ jantu aggiṃ paricare vane,

所の 又 百年の間 人が 火に  仕へむ  林で

ekañ ca bhavit'attānaṃ muhuttam api pūjaye,

一の 又 自己の修されたる者を 一瞬 と雖も 供養せば

sā yeva pūjanā seyyo yaṃ ca vassa-sataṃ hutaṃ.

その 正に 供養が 優れたる 所の物 又  百年の  供物に

(また百年の間林で火に仕へむその者が、然して一人の自己を修せる者を一瞬たりとも供養せば、而れば正にその供養は百年の供物よりすぐれたるなり。)

百年のあいだ、林の中で祭祀(まつり)の火につかえる人がいて、またその人が自己を修養した人を一瞬間でも供養するならば、その供養することのほうが、百年祭祀を営むよりもすぐれている。

 jantu: m. [jan-tu] 人, 有情  nom. sg.

  √jan(a): 生まれる, つくられる

  -tu: 名詞を形成する*19

 aggiṃ: aggi の acc. sg.

  aggi: m. [ag*20-i] 火, 火神, 火天

   √ag(a): 曲がりくねって動く

   -i: 名詞・形容詞を形成する*21

 paricare: paricarati の opt.*22

  paricarati: [pari-carati] 奉仕す, つかえる, 尊敬す, 歩き廻る

   pari-: pref. 円, 遍ねく, 完全に, 強意. 完全性などを意味する*23

   carati: [√car] 行く, 行ず, 歩く

 vane: vana の loc. sg.

  vana: n. [van-a] 林; 欲林, 欲望

   √van(a): 欲する, 望む, 願う