200.
Yadā ca so mato seti uddhumāto vinīlako
の時に 又 其は 死せる 臥す 膨張せる 青き
apaviddho susānasmiṃ, anapekkhā honti ñātayo.
棄てられたる 墓場に 心掛けざる 也 親類等は
(またそは死して臥す時、膨張し、青くなり、墓場に棄てられ、親類らも心掛けざるなり。)
また身体が死んで臥すときには、膨れて、青黒くなり、墓場に棄てられて、親族もこれを顧みない。
yadā: adv. [ya-dā] ~の時に
ya: pron. rel. 所のもの
-dā: 時間を表す副詞を形成する*1
ca: conj. と, そして, また
so: ta の nom. sg. m.*2 それは, 彼は
ta: pron. それ
mato: mata の nom. sg. m.
mata: a. [marati の pp.]*3 死せる, 死者
marati: [√mar(a), Sk. mṛ] 死す
seti: =sayati [√sī, Sk. śī]*4 臥す, 横臥す, 就寝す, 住す
uddhumāto: uddhumāta の nom. sg. m.
uddhumāta: a. [uddhumāyati の pp.]*5 膨張せる, ふくれたる
uddhumāyati: [ud-dhmā] ふくれる, 膨張す
ud-: pref. 上方に, 上に, 昇って, 前へ*6
√dhmā: 吹く, 吹いて作る
vinīlako: vinīlaka の nom. sg. m.
vinīlaka: a. [vi-nīla-ka] 紺青の, 青ぶくれの, 青瘀, 青瘀相
vi-: 語根の意味を強調する*7
nila: a. [nil*8-a] 青, 藍, 青色の
√nil(a): [Sk. ṇil] 青, 藍
-ka: 名詞・形容詞を形成する*9
apaviddho: apaviddha の nom. sg. m.
apaviddha: a. [apa-vijjhati の pp.]*10 捨てられたる
apa-: pref. ~から離れて, 損傷, 崇敬*11
vijjhati: [√vidh(a), Sk. vyadh]*12 射る, 貫く, 貫通す; 射られる
susānasmiṃ: susāna の loc. sg.
susāna: n. 塚間, 塚墓, 墓, 墓場, 墓地
anapekkhā: anapekkha の nom. pl. m.
anapekkha: an- + apekkha
an-: =a- pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では an となる
apekkha: a. [apa-ikkh*13-a] 期待せる, 待望せる, 欲求せる
√ikkh(a): [Sk. īkṣ] 見る, 見なす, 考慮する, 要する
honti: hoti の pl.
hoti: =bhavati [√hū]*14 ある, 存在する
ñātayo: ñāti の nom. pl.*15
ñāti: f. [ñā-ti] 親族, 親類, 親里
√ñā: =jñā, jā 知る
-ti: 女性動作・動作主名詞を形成する*16
201.
Khādanti naṃ supāṇā ca sigālā ca vakā kimī,
食ふ 其を 犬が 又 野干が 又 狼が 虫類が
kākā gijjhā ca khādanti, ye c'aññe santi pāṇayo.
烏が 鷲が 又 食ふ 所の 又/諸他が あり 生物が
(犬や野干や狼や虫類がこれを食らい、烏や鷲やその他これを食ふ生き物あり。)
犬や野狐や狼や虫類がこれをくらい、鳥や鷲やその他の生きものがこれを啄(ついば)む。
khādanti: khādati の pl.
khādati: [√khād(a)] 食ベる, 堅いものを食べる
naṃ: =taṃ*17
taṃ: ta の acc. sg. m.*18
ta: pron. それ
supāṇā: supāṇa の nom. pl.
supāṇa: =supāna, suvāṇa m. 犬
sigālā: sigāla の nom. pl.
sigāla: =siṅgāla m. 野干, ジャッカル, 豺狼
vakā: vaka の nom. pl.
vaka: m. 狼, おおかみ
kimī: kimi の nom. pl.*19
kimi: m. 蛆虫, 虫類, 屍虫
kākā: kāka の nom. pl.
kāka: m. 烏, 鴉, からす
gijjhā: gijjha の nom. pl.
gijjha: =gaddha m. 鷲, わし, はげたか
ye: ya の nom. pl. m.*20
c'aññe: ca + aññe
aññe: añña の nom. pl.*21
añña: a. pron. 他の, 異なる, 余他の
santi: atthi の pl.*22
atthi: [√as(a)]*23 ある, 存在する
pāṇayo: pāṇin の nom. pl.*24
pāṇin: a. [pāṇa-in] 生命ある, 生物
pāṇa: m. [pa-an*25-a] 生物, 有情, 生類, 生命
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*26
√an(a): 呼吸する, 動き回る, 生きる
-in: 所有形容詞を形成する*27
202.
Sutvāna buddha-vacanaṃ bhikkhu paññāṇavā idha,
聞きて 覚者の語を 比丘は 智慧ある 此界に
so kho naṃ parijānāti, yathā-bhūtaṃ hi passati.
其は 実に 其を 知悉す 如実に 何となれば 見る
(此界に覚者の語を聞きたる智慧ある比丘、そは実にそを知悉す。何となればそは如実に見る。)
この世において智慧ある修行者は、覚った人(ブッダ) の言葉を聞いて、このことを完全に了解する。何となればかれは、あるがままに見るからである。
sutvāna: suṇāti の ger.*28
suṇāti: [√su, Sk. śru]*29 聞く, 聴く
buddha-vacanaṃ: buddha-vacana の acc. sg.
buddha-vacana: 仏語
buddha: a. m. [bujjhati の pp.]*30 覚った, 目覚めたる, 覚知せる; 覚者, 仏陀, 仏
bujjhati: =bodhati [√budh(a)]*31 覚る, 目覚む
vacana: n. [vac-ana] 言, 語, 命令語
√vac(a): 言う, 話す, 示す
-ana: 名詞・形容詞を形成する*32
bhikkhu: m. [bhikkh-u] 比丘, 苾芻, 乞者, 乞食者
√bhikkh(a): [Sk. bhikṣ] 乞求, 乞食
-u: 名詞・形容詞を形成する*33
paññāṇavā: paññāṇavant の nom. sg. m.*34
paññāṇavant: a. [paññāṇa-vant] 慧を有する, かしこき
paññāṇa: n. [pa-ñāṇa*35] 識知, 慧智, 標識, 標相
ñāṇa: n. [ñā-na] 智, 智慧
-na: 名詞を形成する*36
idha: =idhaṃ adv. ここに, 此界に
kho: adv. 実に
parijānāti: [pari-jānāti] 暁了す, 遍知す
pari-: pref. 円, 遍ねく, 完全に, 強意. 完全性などを意味する*37
jānāti: [√jā]*38 知る
yathā-bhūtaṃ: adv. [yathā-bhūta の acc.]*39 如実に
yathā: adv. [ya-thā] ~の如くに, ~の如し
-thā: 様子の副詞を形成する*40
bhūta: a. [bhavati の pp.]*41 存在せる. 生物, 生類, 有類, 万物, 要素, 大種
bhavati: [√bhū]*42 ある, 存在する
hi: adv. conj. 実に; 何となれば
passati: [√pas(a), Sk. paś]*43 見る; 見出す, 知る