217.
Yad aggato majjhato sesato vā
所の 最上より 中より 残りより 或は
piṇḍaṃ labhetha para-datt'ūpajīvī,
食を 得べし 他の施しで暮せる
nālanthutunno pi nipacca-vādī,
否/飽きて/褒む事/否 又 落として言ふ
taṃ vāpi dhīra muniṃ vedayanti.
其を 或は/又 賢者等は 牟尼と 知る
(その最上より、中より、或ひは残りの物より食を得べかる、他の施しで暮し、飽きて褒むこと無く、また謗ること無き者、そを或ひはまた賢者らは牟尼と知る。)
他人から与えられたもので生活し、(容器の)上の部分からの食物、中ほどからの食物、残りの食物を得ても、(食を与えてくれた人を)ほめることもなく、またおとしめて罵ることもないならば、諸々の賢者は、かれを〈聖者〉であると知る。
yad: ya の nom. sg. n.*1
ya: pron. rel. 所のもの
aggato: agga の abl. sg. m.
agga: a. 第一, 最高, 最上, 首位, 頂点
majjhato: majjha の abl. sg. m.
majjha: a. m. 中の, 中間の, 現在の; 中正の道, 中国
sesato: sesa の abl. sg. m.
sesa: m. [sis*2-a] 残余, 余り
√sis(a): [Sk. śiṣ] 傷つける, 区別する, 残しておく, 節約する
-a: 名詞・形容詞を形成する*3
vā: adv. conj. または, 或は
piṇḍaṃ: piṇḍa の acc. sg.
piṇḍa: m. 丸いもの, 球; 団食, 食物; 集団
labhetha: labhati の opt. mid. sg.*4
labhati: [√labh(a)] 得る
para-datt'ūpajīvī: para-datt'ūpajīvin の nom. sg. m.*5
para-datt'ūpajīvin: [para-datta-upajīvin*6] 他の施で生活する人
para: a. 他の, 彼方の, 上の
datta: a. [dadāti の pp.]*7 与えられたる
dadāti: [√dā]*8 与える, 施す
upajīvin: a. [upa-jīvin] 依存する, 依って生活する
upa-: pref. ~に, ~に向かって, 近くに, ~と一緒に, ~のそばで, ~のように, ~まで, (apa と逆に)下に, 少なく*9
jīvin: a. [jīv-in] 生命ある, 生存する
√jīv(a): 生命
-in: 所有形容詞・名詞を形成する*10
nālanthutunno: na + alaṃ*11 + thutuṃ*12 + no
na: adv. なし
alaṃ: indecl. 適当なる, 当然の, 十分に, 満足して, 沢山だ
thutuṃ: thavati の inf.*13
thavati: [√thu]*14 ほめる, 賞讃す
no: =na adv. なし
pi: =api adv. conj. も, 亦, いえども, けれども, たとい~でも
nipacca-vādī: nipacca-vādin の nom. sg. m.*15
nipacca: nipatati の ger.*16
nipatati: [ni-patati] 倒れる, 倒礼[五体投地]す, 集合す
ni-: 外に, 前へ, 下に, 中に, 下方に, 中で, 下で*17
patati: [√pat(a)] 落ちる, 倒れる
vādin: a. [vad*18-in] 説者, 主張者, 論師
√vad(a): 説く, 言う, 叫ぶ
taṃ: ta の acc. sg. m.*19
ta: pron. それ
vāpi: vā + pi
vā: adv. conj. または, 或は
pi: =api adv. conj. も, 亦, いえども, けれども, たとい~でも
dhīrā: dhīra の nom. pl.
dhīra: a. m. [dhī-ra] 堅固な, 賢き, 賢者, 慧者, 英賢
√dhī: 智, 知, 理解, 想像, 概念
-ra: 名詞・形容詞を形成する*20
muniṃ: muni の acc. sg.
muni: m. [mun-i] 牟尼, 寂黙, 黙者, 賢人
√mun(a): [Sk. muṇ] 誓約
-i: 名詞・形容詞を形成する*21
vedayanti: vedayati の pl.*22
vedayati: =vedeti [vindati の caus.]*23 知る, 感受す, 経験す; 知らしめる
vindati: [√vid(a)]*24 知る; 見出す, 所有す
218.
Muniṃ carantaṃ virataṃ methunasmā,
誓約せる 行ぜる 離れたる 淫欲の交わりより
yo yobbane na upanibajjhate kvaci,
所の 若きに 否 著すべし 誰かに
madappamādā virataṃ vippamuttaṃ,
驕慢の放逸より 離れたる 解脱せる
taṃ vāpi dhīra muniṃ vedayanti.
其を 或は/又 賢者等は 牟尼と 知る
(うら若き誰かに著すべかること無き者、誓約し、行じ、淫欲の交わりより離れ、驕慢の放逸より離れ、解脱せるその者を、或ひはまた賢者らは牟尼と知る。)
淫欲の交わりを断ち、いかなるうら若き女人にも心をとどめず、驕りまたは怠りを離れ、束縛から解脱している聖者──かれを諸々の賢者は(真の)〈聖者〉であると知る。
muniṃ: muni の acc. sg.
carantaṃ: carati の ppr. acc. sg. m.*25
carati: [√car(a)] 行く, 行ず, 歩く
virataṃ: virata の acc. sg. m.
virata: a. [viramati の pp.]*26 離れたる, 慎しめる
viramati: [vi-ramati] 離れる, 止める, 慎しむ
vi-: pref. ばらばらに, 離れて, ~なしに. 分離, 相違, 分散を意味する. 強意*27
ramati: [√ram(u)] 楽しむ, 喜ぶ
√ram(u): 遊ぶ, 喜ぶ, 性交渉を持つ
methunasmā: methuna の abl. sg.
methuna: a. n. 婬, 婬欲, 行欲, 交会
yo: ya の nom. sg. m.*28
yobbane: yobbana の loc. sg.
yobbana: n. 青年, 青春
upanibajjhate: upanibajjhati の opt. sg.*29
upanibajjhati: [upanibandhati の pass.]*30 執著す, 固着す
upanibandhati: [upa-ni-bandhati] 固く結ぶ,執着する
bandhati: [√badh(a)]*31 縛る, 結ぶ
kvaci: =kuvaci adv. [kva-ci] どこかに, どこででも
kva: =kvaṃ, kuva, kuvaṃ adv. どこに
-ci: 疑問代名詞について不定代名詞を形成する*32
madappamādā: madappamāda の abl. sg. m.
madappamāda: [mada-pamāda*33] 憍の放逸
mada: m. [mad-a] 憍, 憍慢, 慢心
√mad(a): 迷妄, 等閑, 忘却, 驕慢
pamāda: m. a. [pa-mad*34-a] 放逸, 放逸なる
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*35
vippamuttaṃ: vippamutta の acc. sg. m.
vippamutta: a. [vi-pamutta*36] 脱せる, 自由となれる
pamutta: a. [pamuñcati の pp.]*37 脱せる, 自由になれる
pamuñcati: [pa-muñcati] 脱す, 解脫す, 出す, 放つ; 捨つ, 自由にす
muñcati: [√muc(a)]*38 脱す, のがれる, 自由になる, 放つ