113.
"Iti h'etaṃ vijānāma, ekādasamo so parābhavo,
斯く 実に/是を 了知す 第十一の 其は 破滅
dvādasamaṃ bhagavā brūhi, kimparābhavato mukhaṃ."
第十二を 世尊は 説き給へ 何か/破滅への 門は
(「実に我らは斯くの如くこれを了知す。そは第十一の破滅なり。世尊は第十二を説き給へ。破滅への門は何か」)
「よくわかりました。おっしゃるとおりです。これが第十一の破滅です。先生! 第十二のものを説いてください。破滅への道は何ですか?」
iti: indecl. かく, ~と, とて
h’etaṃ: hi*1 + etaṃ
hi: adv. conj. 実に; 何となれば
etaṃ: eta の acc. sg. n.*2
eta: pron. a. これ, それ
vijānāma: vijānāti の 1pl.
vijānāti: [vi-jānāti] 了知す, 了別す, 識知す
vi-: 語根の意味を強調する*3
jānāti: [√jā]*4 知る
ekādasamo: ekādasama の nom. m.*5
ekādasama: a. [ekādasa-ma] 第十一
ekādasa: num. [eka*6-dasa] 十一
eka: a. num. 一, 一つ, 或る
dasa: num. 十
-ma: 序数を形成する*7
parābhavo: parābhava の nom. sg.
parābhava: m. [parā-bhava] 敗北, 敗亡
dvādasamaṃ: dvādasama の acc. m.*8
dvādasama: a. [dvādasa-ma] 第十二
dvādasa: num. [dvi-dasa] 十二
dvi: num. 二
bhagavā: bhagavat の nom. sg.*9
bhagavat: =bhagavant m. [bhaga-vat] 世尊, 薄伽梵, 仏
bhaga: m. [bhaj*10-a] 幸運, 福運
√bhaj(a): 尊崇, 崇拝, 敬慕
-a: 名詞・形容詞を形成する*11
brūhi: brūti の imper. 2sg.*12
brūti: [√brū] 言う, 告げる, のベる
kimparābhavato: kiṃ*13 +parābhavato
kiṃ: ka の nom. sg. n.*14 何, いかに, いかなる
ka: pron. inter. 誰? 何?
parābhavato: parābhavat の dat. sg.*15
parābhavat: m. [parā-bhū-at*16] 敗北, 敗亡
√bhū: ある, 存す
-at: =-ant 名詞・形容詞を形成する
mukhaṃ: mukha の nom. sg.
mukha: n. 口, 入口, 門; 顔, 面, 前面; 頂点
114.
"Appa-bhogo mahā-taṇho khattiye jāyate kule,
財少なき 渇欲の大なる 王族に 生まる 家に
so ca rajjaṃ patthayati, tam parābhavato mukhaṃ.
其が 又 王位を 欲す 其は 破滅への 門
(「財少なくして渇欲の大なる者が王族の家に生まる。またそが王位を欲す。そは破滅への門なり。)
「クシャトリア(王族)の家に生まれた人が、材料が少ないのに欲望が大きくて、この世で王位を獲ようと欲するならば、これは破滅への門である。
appa-bhogo: appa-bhoga の nom. sg. m.
appa-bhoga: 少財, 貧しき
appa: a. n. 少き, 些細の; 少量, 些細
bhoga: m. [bhuj*17-a] 受用, 富, 財, 財物, 貨財, 俸禄
√bhuj(a): 食べる, 享受する, 楽しむ, 所有する
-a: 名詞・形容詞を形成する*18
mahā-taṇho: mahā-taṇhā の nom. sg. m.
mahā: =mahant a. 大なる, 偉大の
taṇhā: f. [Sk. tṛṣṇā] 渇愛, 愛, 愛欲
tṛṣṇā: 渇き; 欲望, 貪欲
khattiye: khattiya の loc. sg.
khattiya: m. カツテイヤ, 剎帝利, 王族
jāyate: jāyati の mid. sg.*19
jāyati: [√jā]*20 生まれる, 再生する
kule: kula の loc. sg.
kula: n. [kul-a] 家, 良家, 族姓
√kul(a); 蓄積する, 親族となる
so: ta の nom. sg. m.*21 それは, 彼は
ta: pron. それ
ca: conj. と, そして, また
rajjaṃ: rajja の acc. sg.
rajja: n. [rāj-a*22] 王たること, 王国, 王位, 王権, 統治, 政権
rāj(a): 輝く, 統治する, 首領である
patthayati: =pattheti [pa*23-atth]*24 欲求す, 希求す, 望む
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*25
√atth(a): [Sk. arth] 目的, 願望, 欲望, 義, 手段, 意味, 物, 事, 利益, 乞求
115.
Ete parābhave loke paṇḍito samavekkhiya,
是等の 破滅を 世の 賢者は 観じて
ariyo dassana-sampanno, sa lokaṃ bhajate sivan" ti
聖なる 見者は 其は 世に 親しむ 幸福なる と
(世に於てこれらの破滅を賢者は観じたる後、聖なる見者は、そは幸福なる世に親しむ」と。)
世の中にはこのような破滅のあることを考察して、賢者・すぐれた人は真理を見て、幸せな世界を体得する。」
ete: eta の acc. pl. m.*26
eta: pron. a. これ, それ
parābhave: parābhava の acc. pl.
loke: loka の loc. sg.
loka: m. [lok-a] 世, 世間, 世界
samavekkhiya: samavekkhati の ger.*27
samavekkhati: [saṃ*28-avekkhati] 観察す, 考察す
saṃ-: =sam- pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に. 強意*29
avekkhati: [ava-ikkhati*30] 観察する, 見る
ava-: =o- pref. 下に, 離れて, 戻って, 外れて, 少なく. 軽視*31
ikkhati: [√ikkh(a), Sk. īkṣ] 見る
ariyo: ariya の nom. sg. m.
ariya: a. m. 聖なる, 神聖なる, 尊貴の, 聖者
dassana-sampanno: dassana-sampanna の nom. sg. m.
dassana-sampanna: 見具足
dassana: n. [<das] 見, 見ること
√das(i): [Sk. dṛś] 見る
sampanna: a. [sampajjati の pp.]*32 具足せる, 成就せる
sampajjati: [saṃ-pajjati] 起る, なる, 成功す
pajjati: [√pad(a)]*33 歩く, 行く; 落ちる
sa: =so ta の nom. sg. m.*34
lokaṃ: loka の acc. sg.
bhajate: bhajati の mid. sg.*35
bhajati: [√bhaj(a)] 親近す, 奉仕す
√bhaj(a): 共有する, 配る, 分ける
sivan: =sivaṃ*36 siva の acc. sg.
siva: a. n. m. 吉祥の, 幸福の; 幸福, 吉祥; シグ神, シグ神の崇拝者
ti: ind. [iti の略] と, かく