蓮華草のブログ

ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。(中村元訳『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫)

スッタニパータで学ぶパーリ語 68 (128-130.)

128.

Yo  ve para-kulaṃ gantvā bhutvāna suci-bhojanaṃ

所の者 実に 他家に  行きて  食ひて  浄食を

āgataṃ na paṭipūjeti, taṃ jaññā vasalo iti.

来れるを 否 敬ふ  其は 知るべし 賤民 と

(実に他家に行き浄食を食ひて、来れる者をもてなすこと無き者。そは賤民なりと知るべし。)

他人の家に行っては美食をもてなされながら、客として来た時には、返礼としてもてなさない人、──かれを賤しい人であると知れ。

 yo: ya の nom. sg. m.*1

  ya: pron. rel. 所のもの

 ve: adv. 実に

 para-kulaṃ: para-kula の acc. sg.

  para-kula: 他家

   para: a. 他の, 彼方の, 上の

   kula: n. [kul-a] 家, 良家, 族姓

    √kul(a); 蓄積する, 親族となる

    -a: 名詞・形容詞を形成する*2

 gantvā: gacchati の ger.*3

  gacchati: [√gam(u)]*4 行く

 bhutvāna: bhuñjati の ger.*5

  bhuñjati: [√bhuj(a)]*6 食べる, 享受す, 受用する

 suci-bhojanaṃ: suci-bhojana の acc. sg.

  suci-bhojana: 浄食

   suci: a. n. [suc-i] 浄き, 清浄の, 清浄

    √suc(a): [Sk. śuc] 清浄

    -i: 名詞・形容詞を形成する*7

   bhojana: n. [bhuj*8-ana] 食物, 食, 飲食

    √bhuj(a): 食べる, 享受する, 楽しむ, 所有する

    -ana: 名詞・形容詞を形成する*9

 āgataṃ: āgata の acc. sg. m.

  āgata: a. [āgacchati の pp.]*10 来れる

   āgacchati: [ā-gacchati] 来る, 近づく, 帰る

    ā-: pref. 語根の意味を逆転させる*11

 na: adv. なし

 paṭipūjeti: [paṭi-pūjeti] 尊敬する, 敬意を払う

  paṭi-: pref. prep. 反対に, 戻して, 逆方向に, 戻って, 返して, 向かって, 近くに*12

  pūjeti: [√pūj(a)]*13 供養す, 尊敬す, 崇拝す

 taṃ: ta の nom. sg. n.*14

  ta: pron. それ

 jaññā: jānāti の opt.

  jānāti: [√jā]*15 知る

 vasalo: vasala の nom. sg.

  vasala: m. 賎民; 売女

 iti: indecl. かく, ~と, とて

 

129.

Yo brāhmaṇaṃ vā samaṇaṃ vā aññaṃ vāpi vaṇibbakaṃ

所の者 婆羅門を 或は 沙門を 或は 他を 或は/亦 乞食者を

musā-vādena vañceti, taṃ jaññā vasalo iti.

虚言を以て   欺く 其は 知るべし 賤民 と

(或ひはバラモンを、或ひは沙門を、或ひはまた他の乞食者を虚言を以て欺く者。そは賤民なりと知るべし。)

バラモンまたは〈道の人〉、または他の〈もの乞う人〉を嘘をついてだます人、──かれを賤しい人であると知れ。

 brāhmaṇaṃ: brāhmaṇa の acc. sg.

  brāhmaṇa: m. 婆羅門, 婆羅門族

 : adv. conj. または, 或は

 samaṇaṃ: samaṇa の acc. sg.

  samaṇa: m. [sam-ana] 沙門

   √sam(u): [Sk. śram] 勤息

   -ana: 名詞・形容詞を形成する*16

 aññaṃ: añña の acc. sg.

  añña: a. pron. 他の, 異なる, 余他の

 vāpi: vā + api*17

  api: adv. conj. も, 亦, いえども, けれども, たとい~でも

 vaṇibbakaṃ: vaṇibbaka の acc. sg.

  vaṇibbaka: m. 乞食者, 旅人, 浮浪者

 musā-vādena: musā-vāda の instr. sg. m.

  musā-vāda: 妄語, 妄言, 虚誑語

   musā: adv. 偽りて, 妄, 虚妄に

   vāda: m. [vad*18-a] 説, 語, 論

    √vad(a): 説く, 言う, 叫ぶ

 vañceti: [vañcati の caus.]*19 だます, いつわる, 欺瞞す

  vañcati: [√vañc(a)] 歩き回る

 

130.

Yo brāhmaṇaṃ vā samaṇaṃ vā bhatta-kāle upaṭṭhite

所の者 婆羅門を 或は 沙門を 或は 食時に 供せられたるを

roseti vācā na ca deti, taṃ jaññā vasalo iti.

悩ます 語が 否 又 与ふ 其は 知るべし 賤民 と

(或ひは婆羅門を、或ひは沙門を、食事の時に言葉で悩ませ、供せられたるものを与ふこと無き者。そは賤民なりと知るべし。)

食事のときが来たのに、バラモンまたは〈道の人〉を言葉で罵り食を与えない人、──かれを賤しい人であると知れ。

 bhatta-kāle: bhatta-kāla の loc. sg.

  bhatta-kāla: 食時

   bhatta: n. a. [bhaj の pp.]*20 食, 食事

    √bhaj(a): 料理する

   kāla: m. 時, 応時, 正時

 upaṭṭhite: upaṭṭhita の acc. pl. m.

  upaṭṭhita: a. [upaṭṭhāti の pp.]*21 供えられたる, 用意された, 現起せる, 現前せる

   upaṭṭhāti: [upa-thā*22] 現われる, 起る

    upa-: pref. ~に, ~に向かって, 近くに, ~と一緒に, ~のそばで, ~のように,  ~まで, (apa と逆に)下に, 少なく*23

    √thā: [Sk. sthā] 立つ, 立ち止まる, 存在する, ある状態でいる

 roseti: [rus*24 の caus.]*25 怒らせる, 悩害す

  √rus(a): [Sk. ruṣ] 害す, 悩ませる, いらだたせる, 怒らせる

 vācā: f. [vac*26-ā] 語, 言  nom. sg.

  √vac(a): 言う, 話す

  : 女性名詞を形成する*27

 ca: conj. と, そして, また

 deti: =dadāti*28

  dadāti: [√dā]*29 与える, 施す