45.
Sace labhetha nipakaṃ sahāyaṃ,
もし 得ば 賢明なる 朋友を
saddhiṃ-caraṃ sādhu-vihāri-dhīraṃ,
同伴者を 善く住せる智者を
abhibhuyya sabbāni parissayāni,
打ち勝ちて 一切に 諸難に
careyya ten'atta-mano satīmā.
歩むべし 其と/適意の 具念の
(もし、賢明なる朋友、善く住せる同伴者を得ば、一切の危難に打ち勝ちて、己が意に適いて具念なるその者と共に歩むべし。)
もしも汝が、〈賢明で協同し行儀正しい明敏な同伴者〉を得たならば、あらゆる危難にうち勝ち、こころ喜び、気をおちつかせて、かれとともに歩め。
sace: conj. もし
labhetha: labhati の opt. mid. sg.*1
labhati: [√labh(a)] 得る
nipakaṃ: nipaka の acc. sg.
nipaka: a. m. 賢明の, 慎重なる, 智者
sahāyaṃ: sahāya の acc. sg.
sahāya: m. [saha-i-a*2] 朋友, 仲間, 僚友
saha: prep. pref. 共に, 倶に
√i: 行く
-a: 名詞・形容詞を形成する*3
saddhiṃ-caraṃ: saddhiṃ-cara の acc. sg. m.
saddhiṃ: adv. 共に, ー緒に
cara: a. m. [car-a] 歩行の, 密偵, 間諜
√car(a): 行く, 動く, 彷徨う, 行ず
sādhu-vihāri-dhīraṃ: sādhu-vihāri-dhīra の acc. sg. m.
sādhu: a. adv. interj. [sādh-u] 善き, 善良の, 善人, 善く; 善い哉, 善哉, 何卒, どうぞ, 幸甚なり
√sādh(a): 成功, 達成
-u: 名詞・形容詞を形成する*4
vihāri: =vihārin a. [vi-har*5-in] 住者, 住ある
vi-: 語根の意味を強調する*6
√har(a): ある, 存在す
-in: 所有形容詞・名詞を形成する*7
dhīra: a. m. [dhī-ra] 堅固な, 賢き, 賢者, 慧者, 英賢
√dhī: 智, 知, 理解, 想像, 概念
-ra: 名詞・形容詞を形成する*8
abhibhuyya: abhibhavati の ger.*9
abhibhavati: [abhi-bhavati] 打ち勝つ, 征服す
abhi-: prep. 対して, 向って, 勝れて, 過ぎて
bhavati: [√bhū]*10 ある, 存在する
sabbāni: sabba の acc. pl.
sabba: a. n. 一切の, すべて, 一切のもの
parissayāni: parissaya の acc. pl.
parissaya: m. n. 危難, 危険, 険難
careyya: carati の opt.*11
carati: [√car(a)] 行く, 行ず, 歩く
ten'attamano: tena*12 + atta-mano
tena: pron. [ta の ins. m. n. sg.]*13 それによって, それ故に
ta: pron. それ
atta-mano: atta-mana の nom. sg. m.
atta-mana: 心にかなえる, 適意の, 悅意の
atta: =attan m. [Sk. ātman] 我, 自己, 我体
mana: m. n. [man-a] 意, 心
√man(u): 思う, 考える, 見なす, 誇る, 知る
satīmā: satimant の nom. sg. m.*14
satimant: a. [sati*15-mant] 具念の, 有念者
sati: f. [sar*16-ti] 念, 憶念, 記憶, 正念
-mant: =mat 所有形容詞を形成する*17
46.
No ce labhetha nipakaṃ sahāyaṃ
否 もし 得ば 賢明なる 朋友を
saddhiṃ-caraṃ sādhu-vihāri-dhīraṃ,
同伴者を 善く住せる智者を
rājā va raṭṭhaṃ vijitampahāya,
王が 如く 国を 制せるを/捨てたる
eko care khagga-visāṇa-kappo.
独り 歩むべし 犀の角の為せる
(もし、賢明なる朋友、善く住せる同伴者を得ざれば、制せる国を捨てたる王が如く、独り歩むべし。犀の角の為せる如く。)
しかしもしも汝が、〈賢明で協同し行儀正しい明敏な同伴者〉を得ないならば、譬えば王が征服した国を捨て去るようにして、犀の角のようにただ独り歩め。
no: =na adv. なし
ce: conj. もし, 若し
rājā: rājan の nom. sg.*18
rājan: m. [rāj-an] 王, 国王
√rāj(a): 輝く, 統治する, 首領となる
-an: 名詞を形成する*19
va: [iva の略] indecl. 如く
raṭṭhaṃ: raṭṭha の acc. sg.
raṭṭha: n. 国, 王国
vijitampahāya: vijitaṃ*20 + pahāya
vijitaṃ: vijita の acc. sg.
vijita: a. n. [vijayati の pp.]*21 征服せる, 勝利の; 領土, 王国
vijayati: =vijeti, vijinati [vi-ji]*22 征服す, 打ち勝つ
pahāya: [pajahati の ger.]*23 捨てて
pajahati: =pajahāti [pa-jahati] 捨てる, 捨断する, 断ずる
pa-: pref. 前に, 先に, 強意. 始動を意味する*24
jahati: =jahāti [√hā]*25 捨つ, 断ず
eko: eka の nom. sg. m.
eka: a. num. 一, 一つ, 或る
care: carati の opt.*26
carati: [√car(a)] 行く, 行ず, 歩く
khagga-visāṇa-kappo: khagga-visāṇa-kappa の nom. sg. m.
khagga: 犀, さい
visāṇa: n. 角, 象牙
kappa: a. [kapp-a] 為せる
√kapp(a): 為す
47.
Addhā pasaṃsāma sahāya-sampadaṃ,
真に 褒む 朋友を伴へるを
seṭṭhā samā sevitabbā sahāyā,
最上の 等しき 親近すべき 朋友等が
ete aladdhā anavajja-bhojī,
此等を 得ずして 罪無きを楽しめる
eko care khagga-visāṇa-kappo.
独り 歩むべし 犀の角の為せる
(我らは真に朋友を伴へることを褒め称ふ。最上の、または等しき、親近すべき朋友らが倶(とも)なるを。これらを得ずしては罪無きを楽しみ、独り歩むべし。犀の角の為せる如く。)
われらは実に朋友を得る幸せを讃(ほ)め称える。自分よりも勝れあるいは等しい朋友には、親しみ近づくべきである。このような朋友を得ることができなければ、罪過(つみとが)のない生活を楽しんで、犀の角のようにただ独り歩め。
addhā: adv. 確かに, 真に
pasaṃsāma: pasaṃsati の 1pl.*27
pasaṃsati: [pa-saṃs] ほめる, 賞讃す
√saṃs(a): [Sk. śaṃs] ほめる
sahāya-sampadaṃ: sahāya-sampadā の acc. sg. m.
sahāya-sampadā: 朋友の具足
sampadā: f. [saṃ*28-pad-ā] 円足, 具足, 成就, 遂行, 結果
saṃ-: =sam- pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に. 強意*29
√pad(a): 行く, 動く, 近づく, 得る, 道
seṭṭhā: seṭṭha の nom. pl. m.
seṭṭha: a. 最上の, 最勝の, 殊勝の
samā: sama の nom. pl. m.
sama: a. 同じ, 同ーの, 平等の, 正しき, まさしき
sevitabbā: sevitabba の nom. pl. m.
sevitabba: a. [sevati の grd.]*30 親近すベき, 応依付
sevati: [√sev] 仕える, 従う, 依付す, 親しむ
sahāyā: sahāya の nom. pl. m.
ete: eta の nom. pl. m.*31
eta: pron. a. これ, それ
aladdhā: [a-laddhā] 得ずして
a-: pref. 否定を示す. 無, 非, 不
laddhā: labhati の ger.*32
labhati: [√labh(a)] 得る
anavajja-bhojī: anavajja-bhojin の nom. sg. m.*33
anavajja: a. [an-avajja] 無罪の, 無過の
an-: =a- pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では an となる
avajja: a. n. 罪の, 非難さるべき, 罪, 過失
bhojin: a. [bhuj*34-in] 食者, 受用者
√bhuj(a): 食べる, 享受する, 楽しむ, 所有する
-in: 所有形容詞・名詞を形成する*35