261.
Bāhusaccañ ca sippañ ca vinayo ca susikkhito
有識 又 技 又 慎み 又 善く学び得たる
subhāsitā ca yā vācā, etaṃ maṅgalamuttamaṃ.
善く説かれたる 又 所の 語 是が 吉祥/上無き
(また有識(いうそく)、また技あること、またよくもて付きし慎み、またことばのよく説かれたること、これが上(かみ)無き吉祥なり。)
深い学識あり、技術を身につけ、身をつつしむことをよく学び、ことばがみごとであること──これがこよなき幸せである。
bāhusaccañ: =bāhusaccaṃ*1
bāhusaccaṃ: bāhusacca の nom. sg.
bāhusacca: n. [bahu*2-suta-ya] 多聞, 博識
bahu: a. 多くの, 多の
suta: a. n. [suṇāti の pp.]*3 聞ける, 所聞, 聞, 天啓, ヴェーダ, 博聞
suṇāti: [√su, Sk. śru]*4 聞く, 聴く
-ya: 主に中性抽象名詞を形成する*5
ca: conj. と, そして, また
sippañ: =sippaṃ*6
sippaṃ: sippa の nom. sg.
sippa: n. [<sil] 技術, 技芸, 工巧, 職技; 職人
√sil(a): [Sk. śil] 芸術, 技術, 創意, 創造, 賢明, 仕事, 労働, 儀式
vinayo: vinaya の nom. sg.
vinaya: m. [vi-nī-a*7] 調伏, 律, 毘尼, 毘奈耶, 律蔵
vi-: 語根の意味を強調する*8
√nī: 導く, 運ぶ, 治める, 統治する
-a: 名詞・形容詞を形成する*9
susikkhito: susikkhita の nom. sg. m.
susikkhita: a. [su-sikkhita] 善く学べる
su-: pref. よき, 善き, 良き, 妙(たえ)なる, 易き, 極めて
sikkhita: a. [sikkhati の pp.]*10 学べる, 教わった
sikkhati: [√sikkh(a)] 学ぶ, 学得す
subhāsitā: subhāsita の nom. pl. m.
subhāsita: a. [su-bhāsita] 善く説かれた, 善語
bhāsita: a. n. [bhāsati の pp.]*11 語れる, 言える, 説ける; 言説, 所説
bhāsati: [√bhās(u), Sk. bhāṣ] 話す, 語る, 言う; 照る, 輝く
yā: ya の nom. sg. f.*12
ya: pron. rel. 所のもの
vācā: f. [vac*13-ā] 語, 言
√vac(a): 言う, 話す, 示す
-ā: 女性名詞を形成する*14
etaṃ: eta の nom. sg. n.*15
eta: pron. a. これ, それ
maṅgalamuttamaṃ: maṅgalaṃ*16 + uttamaṃ
maṅgalaṃ: maṅgala の nom. sg.
maṅgala: a. n. [maṅg-a-la] 吉祥の, 吉瑞の, 瑞祥, 祝祭, 祝典, 吉凶判断
√maṅg: 行く, 動く, 美しく見える
-la: 形容詞・名詞を形成する*17
uttamaṃ: uttama の nom. sg. n.
uttama: a. [ud の最上級*18] 最上の, 最高の
ud-: pref. 上方に, 上に, 昇って, 前へ*19
262.
Mātā-pitu-upaṭṭhānaṃ putta-dārassa saṅgaho
父母に仕ふる事 妻子の 愛護
anākulā ca kammantā, etaṃ maṅgalamuttamaṃ.
混乱無き 又 業 是が 吉祥/上無き
(父母に仕ふること、妻子の愛護、また混乱無き業、これが上無き吉祥なり。)
父母につかえること、妻子を愛し護ること、仕事に秩序あり混乱せぬこと、──これがこよなき幸せである。
mātā-pitu-upaṭṭhānaṃ: mātā-pitu-upaṭṭhāna の nom. sg.
mātā: mātar の nom. sg.*20
mātar: f. 母
pitu: =pitar m. 父, 父祖
upaṭṭhāna: n. [upa-thā*21-na] 奉仕, 給仕, 隨侍, 看病, 現起
upa-: pref. ~に, ~に向かって, 近くに, ~と一緒に, ~のそばで, ~のように, ~まで, (apa と逆に)下に, 少なく*22
√thā: [Sk. sthā] 立つ, 立ち止まる, 存在する, ある状態でいる
-na: 名詞を形成する*23
putta-dārassa: putta-dāra の gen. sg.
putta: m. 子, 子息; 男児
dāra: m. 妻, 若い女
saṅgaho: saṅgaha の nom. sg.
saṅgaha: m. [saṃ*24-gah-a] 摂, 摂取, 愛護, 聚会, 結集, 輯録, 蔵外の書
saṃ-: pref. 共に, 沿って, 充分に, 完全に. 強意*25
√gah(a): [Sk. gṛh] 取る, 受け入れる, 捕まえる, 奪う
anākulā: anākula の nom. pl. m.
anākula: a. [an-ākula] 混乱なき, 悩乱なき
an-: =a- pref. 否定を示す. 無, 非, 不. 母音の前では an となる
ākula: a. 混乱せる
kammantā: kammanta の nom. pl.
kammanta: m. [kamma*26-anta] 業, 作業, 事業, 家業, 職業, 産業, 業務
kamma: n. [kar*27-ma] 業, 行為, 作業, 家業, 羯磨, 儀式
√kar(a): [Sk. kṛ] 為す, 作す, 成す
-ma: 抽象名詞, 動作主名詞, 形容詞を形成する*28
anta: m. 終極, 目的, 極限, 辺, 極端
263.
Dānañ ca dhamma-cariyā ca ñāta-kānañ ca saṅgaho
施与 又 法行 又 親族の 又 愛護
anavajjāni kammāni, etaṃ maṅgalamuttamaṃ.
不可非難の 行ひ 是が 吉祥/上無き
(また施与、また如法の行ひ、また親族の愛護、また難ぜらるべからざる行ひ、これが上無き吉祥なり。)
施与と、理法にかなった行いと、親族を愛し護ることと、非難を受けない行為、──これがこよなき幸せである。
dānañ: =dānaṃ*29
dānaṃ: dāna の nom. sg.
dāna: n. [dā-na] 施, 布施, 施与
√dā: 施与
dhamma-cariyā: 法行 nom. sg.
dhamma: [dhar*30-ma] m. n. 法, 教法, 真理, 正義
√dhar(a): [Sk. dhṛ] 持す
cariyā: f. [<car] 行, 行為, 所行
√car(a): 行く, 動く, 彷徨う, 行ず
ñāta-kānañ: =ñāta-kānaṃ*31
ñātakānaṃ: ñātaka の gen. pl.
ñātaka: m. [ñāta-ka] 親族, 親戚, 親類
ñāta: a. [ñā の pp.]*32 知られた, 有名な, 理解する
√ñā: 知る
-ka: 名詞・形容詞を形成する*33
anavajjāni: anavajja の nom. pl. n.
anavajja: a. [an-avajja] 無罪の, 無過の
avajja: a. n. 罪の, 非難さるべき, 罪, 過失
kammāni: kamma の nom. pl